【妄想劇場】 妖精になった日 | まきしま日記~イルカは空想家~

まきしま日記~イルカは空想家~

ちゃんと自分にお疲れさま。

人は30歳まで童貞を通すと、妖精になれるという…

目が覚める。
妙に爽やかな朝だ。
窓から差し込む初夏の陽光が眩しい。
窓を開けて、青々しい空気を深呼吸。

5月31日。
今日は俺の30回目の誕生日だ。
俺もついに三十路になってしまった。
はあ…なんか妙に凹む。
だからと言って何が変わる訳でもない。
いつも通り、平凡な日常が待っているだけだ。

バイトまで、あと2時間ある。
とりあえず毎朝の日課、マスター●ーション。
俺は○○○をこする。
ひたすらこする。
どうしたことか?一向に勃たない。
俺は意地になってこする。
しかし○○○はピクリともしない。

「クスクス…クスクス…」
「誰だ?」
「いくらこすっても無駄無駄。何も出やしないわよ」
「誰だ?どこから入った?」
「妖精よ。見りゃ分かるでしょ」
「妖精?はあ?そんな馬鹿な」
「あんたが起きたら隣に生身の女がいました、なんて現実的に起こり得ると思う?」
「ん…なんかムカつくぐらい説得力あるな…」

「で、君が妖精なの?」
「そうよ。ようやくお分かり?」
「妖精ねえ…なんかイメージしてたよりブッサイクだなあ…」
「あんたにだけは死んでも言われたくないわね」

「で、その妖精が俺に何の用?」
「あんたが30になったから迎えにきたのよ」
「は?俺を?」
「そう。あんた童貞でしょ?」
「え…まあ、そうだけど…それが何か?」
「おめでとう。あんたも今日から妖精よ」

「俺が妖精?ちょっと待てよ」
「そう。あんたにはもう性欲ないから」
「馬鹿!俺には性欲ありまくりだぞ!」
「じゃあ女の裸を想像して見て」
「ん…想像した」
「で、△△△を×××してる所を想像して見て」
「はい…△△△を×××して見た」
「どう?興奮した?」
「…いや、全く…」
「ね、性欲ないでしょ?」

「えー、俺マジで妖精なの…?」
「そうよ。あんたには身体なんて必要ないでしょ」
「めちゃくちゃ凹むわ~」
「同情はしてあげる」
「俺はいつか彼女つくって、思いっきりエッチしたかった…」
「残念だったわねえ。来世で頑張ることね」
「君がヤらせてくれよー」
「殺すわよ」

「でもあんたには性欲の代わりに、素敵な力をプレゼントしてあげたから」
「素敵な力ってなんだよー?」
「体の力を抜いて」
「はい、抜いた」
「で、浮かび上がって」
「浮かび上がってって…おお!浮かんだ!」
「ね。あんた今日から空飛べるから」
「こんなん別にいらねーし…」

「さあ、行くわよ!ついて来て!」
「行くってどこへ?」
「もちろんネバーランドよ」
「ネバーランド?どこだよ、それ?」
「クスクス…あんたってほんとに無知ね」

こうして俺は、二度と帰らぬ場所へと旅立った…