【妄想劇場】 王城陥落 | まきしま日記~イルカは空想家~

まきしま日記~イルカは空想家~

ちゃんと自分にお疲れさま。

「女王様…」
「やはり反乱軍を指揮していたのはお前だったのね、ウルスス」

「外はもはや火の海にございます。やがてこの王室にも兵はなだれ込んで参りましょう。女王様、ここは潔くご決断を!」
「ウルスス、私はいつかこんな日が来ると思っていました」

「女王様…」
「私たちが密かに愛し合った日の事を覚えていますか、ウルスス」

「…はい、覚えております」
「その時お前はこう言いましたね、『生涯あなたに愛を捧げます』と」

「…申しました」
「でも、私にはすぐにその言葉が嘘であると分かりました。なぜならお前には愛すべき妻がいる。守るべき子供たちがいる。それに引き替え私には…そう、私にはこのラストニアの国土と600万の民がある。けれどこの胸に広がる空虚さ…この空虚さは何ものにも埋められまい。ウルスス、お前が手にしているものに比べ、私の手にしたもののなんと儚いこと…」

「女王様…」
「このラストニア王国の全てを手中にしながら、生涯ただひとつの愛も得られなかった虚しさ…お前には分かるまい」

「…」
「…」

「女王様、兵がなだれ込んで来た模様です。さあ、ご自決なさりませ!」
「おお、ウルスス、お前はなんと残酷なことを言うのです!お前は…お前は私に愛を誓いながら、その手を汚すことなく、私から命を取ろうと…」

「私に何をご所望ですか、女王様」
「お前のその手で…お前のその手で私を締め殺しなさい。お前の手にかけられるのなら、私は本望です」

「私には出来ませぬ!」
「やるのです!これは私からの最後の命令です!」

「女王様…」
「さあ、雑兵共が来る前に早く!」

「分かりました。失礼します」
「…んぐっ…」

「女王様」
「…な…に…ウル…スス…」

「心より…心よりお慕い申し上げます」
「…ありが…とう…うれしい…わ…」

「…」
「…ん…ああっ…」

「女王様!女王様ぁ!」
「…」

「ああ、なんという…なんということだ…私は、自らの手で最愛の人を殺めてしまった…この手の感触…そう、この手の感触が消える日まで、私はいかなる十字架も甘んじて受け入れよう…」