久しぶりに芥川賞系純文学を読む
第146回平成23年度下半期芥川賞
★道化師の蝶「群像7月号」 円城塔(えんじょうとう)
★共喰い「すばる10月号」 田中慎弥(たなかしんや)
さっそく書店で文芸春秋2012・3月号を買い求める。
田中慎弥の受賞インタビューが興味を持った根底にあるのを否定できない。単行本「共喰い」を手に取ってパラパラめくると「第三紀層の魚」が併載されていた。
沢木耕太郎氏の「敗れざる者たち」ではないが、前々回の芥川賞で田中慎弥に勝った二人に関心が移り、全く読まなかった文芸春秋2011・3月号を引っ張り出した。あれから1年、時の移りは速い。
第144回平成22年度下半期芥川賞
★きことわ「新潮9月号」 朝吹真理子(あさぶきまりこ)
★苦役列車「新潮12月号」 西村健太(にしむらけんた)
第144回と第146回はどちらも二作同時受賞。
道化師の蝶 円城塔 VS きことわ 朝吹真理子
共喰い 田中慎弥 VS 苦役列車 西村健太
二作受賞というのは構図が似るようです。
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田中慎弥【共喰い】
とにかく真っ直ぐ読めない。何とか斜めに読破した。
セックス描写が評判だが何も感じ取れなかった。
芥川賞候補に選ばれるのが五回目で、従来の作品に比べて明らかに力強さが増し、文章が躍動し作品の密度が高まっていることが感じられた。 ~黒井千次氏の評~
この批評を理解出来なかったが、後日再読しようと思う。
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西村健太【苦役列車】
仕事が休みの雨が降る日、早朝と夕方に二度読破した。二回目の方が私小説の醍醐味を感じ取れた。
食欲と性欲に忠実な駄目男が筆者の投影なら凄い男だ。卑しさと浅ましさが連続する内容に圧倒された。
上と下なら下、清いと汚れなら汚れ、品を感じ取れない小説。これが芥川賞で良いのかと云う感じがしないでもない。
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円城塔【道化師の蝶】
40ベージの小説だが10ページも読まずに断念した。
前衛的な小説がうたい文句だったが、殻が強く中へ入れない。理系人間の独りよがりとしか思えない小説です。選考委員の過半数を獲得したらしいが資質を疑う。
自分と関わりの無い世界で二度と読むことは無い。
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朝吹真理子【きことわ】
文学の名門に生まれた才媛で若い美女の登場です。
何が良いって文章が良い。文章にリズムがあり心地よい。これが芥川賞の小説だと思える新しさを感じ取れる。
だだ時間の流れを理解するのに還暦前の頭では難しい。才能あふれる知的さを一度読んだだけでは踏み込めない。後日、休みで雨が降る日を選んでじっくり再読したい。
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西村健太【苦役列車】と朝吹真理子【きことわ】は対極ある。
男と女、中卒と慶応義塾大学博士課程在籍、上と下が多数。
【きことわ】が大ベストセラーになるかと思ったら売れなかった。
【苦役列車】の方が売上部数で圧倒したのは以外だった。
これが閉塞した平成の御世の現実なのだろうか。
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