現在国内で行われているレースの中で、最も面白いと言っても過言ではない IPS(インタープロト・シリーズ)。
レース自体が見所満載なのは当然として、毎回脱線しまくりのドライバートークショーや、様々な景品が当たるじゃんけん大会(「性能重視」と書かれたトランクスをGETした事ありww)と、お楽しみもいっぱい。
そんな数あるイベントの中で、来場者への最もスペシャルなプレゼントが『同乗走行』です。
(Photo by fuzzyさん)
じゃんけん大会またはクイズ大会を勝ち抜いた数名だけが、その権利を得る事ができるこのスペシャルイベント。
実は私、2年前にじゃんけん大会を見事に勝ち抜いて、インタープロトと混走でレースを行う[レクサス IS F CCS-R]の同乗走行を体験した事があります。
(Photo by fuzzyさん)
その時のドライバーは小林敬一選手。
当時53歳で、インタープロトとCCS-Rのプロクラス・ドライバーの中で最年長でした。
このIPSでは本業のドライバーとして出場していましたが、2014~2016年はスーパーGT 300クラス[ LM corsa ]のチーム監督を務め、現在はS耐にて ST-Xクラス[ HubAuto Racing ]のチーム監督もされています。
そんなチーム監督をされている方の運転するクルマでの同乗走行って、ある意味、現役ドライバーとの同乗走行よりも貴重な体験だったかもしれませんね。
(Photo by fuzzyさん)
その時も大興奮の同乗体験だったのですが、なんと先日(9月17日)行われた2017年 第2回大会に於いて、遂に本命のインタープロト“kuruma”への乗車の機会に恵まれました。
ヘルメットにIPSのステッカーが貼ってある所が、この同乗走行がIPSのイベントとして定着しているのを物語っています。
同乗走行の乗車車両は運次第。
受け取ったパスに書かれた整理番号が、そのまま乗車するマシンのカーナンバーと乗車順になっていて、私のパスに書かれていた整理番号は『37ー3』。
という訳で、37号車の3番目です。
乗車したマシンはコチラ。
エントラントは東名スポーツの[ Pastel Motorsport ]号。
そしてドライバーは、今回がIPS初参戦の三笠雄一選手(24歳)。
PCCJ(ポルシェ カレラカップ ジャパン)2017シリーズに参戦中で、今期4勝を挙げ、最終戦(F1日本GP共催)を残す現在、ポイントランキング2位に着けている若手注目株ドライバーです。
2012〜2013年はFCJにも参戦していたので、探せば当時の写真があるかも。
インタープロトは最近のレーシングカーでは当たり前となっている電子制御に頼らないマシンのため、ステアリングのスイッチ類は非常にシンプルです。
インパネセンターには、後方を映し出すモニターが取り付けられていました。
同乗走行スタート前の様子。
安全面とイベント効率を考慮してか、同乗走行はピット前スタートが多いという印象ですが、IPSは本コース上からスタートします。(そういえば、WTCCの同乗走行も本コース上からでした。)
先頭のマシンがほぼコントロールラインからのスタートですから、富士スピードウェイに詳しい方でしたら、1コーナーまでまだかなりの距離がある事がお分かりかと思います。
この位置から全車が同時スタートし、全力加速で1コーナーへ。
ここが他イベントの同乗走行と最も異なる点です。
通常の同乗走行は大抵、安全第一で間隔を空けて1台づつの走り出し。
しかも制限速度が解除されるピットレーン出口から1コーナーまでは距離が短く、本格的な走行が始まるのは実質1コーナーを越えてから。
追い抜きに関しては、たまたま速度差が大きい車両との混走の場合くらいでしょう。
でもIPSの同乗走行は違います。
この日は雨でしたので、さすがにドライバーの皆さん押さえ気味だったようですが、2年前のCCS-R乗車時はドライ路面でしたので、この同乗走行の真価を味わえました。
スタートからフルスロットルで走り出したマシンは、ホームストレートエンドではかなりのスピードに達し、シートベルトが身体に食い込む程のフルブレーキングをしてからの1コーナーでは、レースさながらの先陣争いが
手が届くのではないかという近距離をインからオーバーテイクされ、左側を見れば同タイミングでアウトからオーバーテイクしていくマシンが !
同乗走行で3ワイドのコーナーリングってありですかぁ
オートサロンのトークショーにて「IPSの同乗走行は他の同乗走行とは違ったレースの醍醐味を味わってもらえる」と関谷さんが仰ってましたが、その言葉に嘘偽りなし。
ダンロップの侵入でも再び3ワイドとなり、大興奮の同乗走行でした。
( ↑ レース直前の三笠雄一選手@グリッドウォーク)
今回のインタープロト同乗走行では、まずそのエンジン音に驚かされました。
ミッドシップに搭載されたトヨタ製3,950cc V6エンジンは、モノコック面を挟んではいるものの、乗車位置からほとんど遮蔽物なく背後にある状態です。
ですからエンジンを始動した瞬間から、V6の野太いエンジンサウンドが直に耳に響いてきます。
レースを見ている分には、IPSのエンジン音はレーシングカーらしい迫力があって良いね〜、なんて思ってましたが、こうして乗ってみると、トークショーで平手晃平選手も言っていた通り、とにかくうるさい。(笑)
走行中は自分の声すらよく聞き取れないくらいで、ドライバーとの会話なんて不可能な気がしました。
完全なウェットコンディションで、レーシングカーならではのフル加速やハードブレーキングを体験できなかったのは残念だったものの、雨ならではの貴重な体験も。
雨天レース時に「前が全く見えない」とドライバーが言っているのをよく耳にしますが、今回それを身を持って体感できた事です。
1コーナー進入時は、右側から抜きに掛かってきた山下健太選手がドライブする55号車に目が行って、前方の状況を良く見ていなかったのですが、コカコーラ・コーナーのアプローチ時に前を見ると、そこにはもやもやと立ち上って前方を覆い尽くす水煙の壁があるのみ。
水煙で前が見えないオンボードカメラ映像は、レース中継でもよく目にします。
でもそれはカメラを通した映像だからであって、きっと肉眼では何となく車両の影を捉えられるのだろうなんと思っていましたが、とんでもない!
前車は影も形もなく、何処にいるかなんてサッパリ分かりません。
また、前だけ見ていたらどこがコーナー始まりなのかも全然分かりません。
前車のブレーキランプが灯って初めて、おおっ、そこにいたのか!と分かった次第。
この時3台前まで確認できたのですが、前車との間隔を取って走っていた三笠選手に対して、この3台は結構接近しているように見えました。
こんなシチュエーションでもバトルをしているレーシングドライバーの感覚は、常人には計り知れないものがありますね。
こんな事を感じられたのも、IPSの混走同乗走行ならではだと思います。
そうそう、インタープロトには市販車のようにドアとボディの間にウェザーストリップがありませんので、結構な量の雨粒が車内に入り込んで来ました。(笑)
走り始めは小刻みなゴツゴツした突き上げを感じたものの、スピードに乗ってしまえばマシンはフラットだったような気がします。
バケットシートに深く座ると足がフットスペース前面に届かず、助手席足元側面には消火器や補機類がありますので、これらを蹴ってはマズいと思うと踏ん張るための足の置き場がなく、コーナーリング時に身体を支えられずに困りました。(4点式シートベルトでがっちり固定されてるので、身体を支える必要はなかったんですけど、条件反射的にねw)
関谷さんから『耳にタンコブ』ができるほど「絶対にぶつけるな!」と言われ、「レース本番より緊張した」と言う三笠選手は、スタートからかなり慎重なドライブだったように感じました。
(『耳にタンコブ』とは、恐らく「タコよりも大きいタンコブができるほど何度も言われた」という意味であろう三笠選手の造語w)
三笠選手、もっと攻めても良かったですよ。(と、他人事のように言ってみるw)
そんな慎重に思える運転と言えど、マシンコントロールはさすがにレーシングドライバーだなぁと感じる瞬間もありました。
前だけ見ていてはもったいないと、ヘアピンの立ち上がりでは三笠選手のハンドルさばきに注目していた所、アクセルを踏み込んだ時にリアがスライドしたのでしょうか、非常に素早く小さなカウンターを当てたのです。
恥ずかしながら普通の人よりはクルマの挙動を感じ取る事ができるという自信があったのですが、私はリアが出た事に全く気が付けませんでした。
1/1000秒を争うレーシングカーを運転するにあたって、私が感じ取れるくらいリアが滑ってからカウンターを当てていたのでは、遅過ぎるのでしょうね。
最小限の舵角、最短の時間で修正するというコントロールを常にしているからこそ、この時もあの素早いカウンターになったのではないかと想像します。
そんなセンシビリティーの高さと反応の速さにも脱帽です。
という感じで、とっても楽しかった同乗走行。
今度はドライ路面でインタープロトに乗ってみたいなぁ〜と言うのは贅沢でしょうね。(笑)
是非多くの方にこの素晴らしい体験をしていただきたいと思います。
(その席は狭き門ではありますが…)
そのためにも、まずはIPS観戦に富士スピードウェイへ出掛けませんとね。
次戦は10月28-29日開催です。