読書メモ CLXXXIX カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』 | 読書メモと自己ログとときどきその他

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読んだ本へのコメントなどを気ままに述べるブログです。ほとんど自分の読書記録のようなものになるかと思いますが、他者への紹介にもなるようにしっかりと表現していきたいと考えております。

こんばんは!

 

本日は小説のレビューを書いていきます。

 

実は昨年からずっと紹介したいと思っていた作品なのですが,レビューを書くのがなかなか難しいと思って,下書き状態でしばらく(約1年)放置していました…(*_*)

 

かなり有名作品なので,ご存じの方も多いと思います。

 

カズオイシグロ先生著,『わたしを離さないで (原題: Never let me go)』です。

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○あらすじ ※ 上記サイトより引用

 

自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育った施設ヘールシャムの仲間も提供者だ。共に青春 の日々を送り、かたい絆で結ばれた親友のルースとトミーも彼女が介護した。キャシーは病室のベッドに座り、あるいは病院へ車を走らせながら、施設での奇 妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に極端に力をいれた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちの不思議な態度、そして、キャシーと愛する人々 がたどった数奇で皮肉な運命に……。彼女の回想はヘールシャムの驚くべき真実を明かしていく――英米で絶賛の嵐を巻き起こし、代表作『日の名残り』を凌駕する評されたイシグロ文学の最高到達点

 

○主な登場人物

 

キャシー  本作品の語り手。主人公的な立場。31歳で,「介護人」の職に11年以上携わっている。「ヘールシャム」の出身。物語は彼女のヘールシャム時代の回想から始まり,現在に至るまでのエピソードが淡々と記述されている。

 

トミー  キャシーの友人。幼い頃はよく癇癪を起していた。物語後半は彼の言動や発言がキーになる。

 

ルース  キャシーの友人。ヘールシャム時代やその後も含めて,キャシーとは気まずい状況になることがしばしばあった。

 

ルーシー先生 キャシー達のヘールシャム時代の保護官。生徒からは人気がある様子。ヘールシャムの生徒の将来に待つ運命を暴露した人物。そして,キャシーらがヘールシャムでの最後の日を迎える前に,ヘールシャムを辞める。

 

エミリ先生  ヘールシャム時代の保護官。「呼ばれもしないのに会いに行くのは勇気がいる」(p.51)と記述されていることからも少し近寄りがたい先生と思われている模様。朝会(全校集会のようなイメージ?)での説教が言葉が難しく生徒にとっては意味不明だが,教室では頭脳明晰そのものであるらしい。その理由のヒントが後半で明らかになる…

 

マダム(マリ・クロード)  「展示会」に毎回顔を出す女性。キャシーがジュディという歌手のNever let me goという曲に合わせて赤ちゃんに見立てた枕を抱いてスローダンスを踊っている様子を見て,なぜか泣いていた。

 

 

○感想

 

本書の特徴を3つほど書いてみました。なお,この記事では物語のネタバレにはなるべく迫らないようにしていますが,一部作品背景の要素などを記述しています。

 

1. 徐々に明らかになっていく物語の世界

 

最初のうちは,

 

「提供者」,「介護人」,「ヘールシャム」,「展示会」,「交換会」,「保護官」などなんだかよく分からない言葉が並びます。「どういうこと?」と思いつつも読み進めていくと徐々に小説の世界における構成要素が明確化されていきます。このような構成にできるのは,キャシーという語り手が自己の過去体験を回想するという場面設定ならではのことです。

 

その回想には,「多少記憶違いもあるかもしれません」(p.18)というように,やや行間がある部分もあったり,主観が入っているように感じる部分もあったり,というところがあると思われます。

 

これは,意図的に著者によって描かれているのでしょう。

 

世間的には「信頼できない語り手」という手法として知られています。

 

私も何年か前にこの「信頼できない語り手」というワードを知って,上手いこと言うなと感心したものです。

 

そして,ぼんやりしていた世界は,ルーシー先生の言葉でその一端を読者が垣間見ることになり,その後も急転直下のような展開はなく,徐々に色々な世界の要素,裏側,真実が明らかになっていきます。

 

2. 淡々と描かれる衝撃の物語世界

 

客観的な視点で読み進めていくと,物語における世界はかなりデストピア的なものであると感じます。

 

それにも関わらず,小説の記述は事実が淡々と描かれているだけで,登場人物の心理描写というのはあまりえがかれていないように思われます。

 

私自身はカズオイシグロ作品を数冊しか読んでいないので分からない部分が多いのですが,そのような淡白に描いていく文体が特徴であると一般的に言われているようです(愛読者の方にとっては別の意見もあるかもしれませんが…)

 

この作品はその文体が物語の暗澹たる世界を色濃く表現しているともいえます。

 

3. 近代以後の世界に問題提起をする本質的なテーマ設定

 

本作品に描かれている世界は一見すると現実とかけ離れています。

 

しかし,物語の背景を細分化していくと,一部の要素は今我々が生きる世界に直結するような存在であると感じます。なるべくネタバレを避けるために,少しくどい言い回しになりますが,近代以後に科学技術が発展していくことで新たに出現するかもしれない問題に対して言及しているように思えます。この物語と同じ世界になることはないかもしれませんが,類似した世界がつくり出される可能性は高いような気がします…

 

我々はキャッシーたちの側に立たされる可能性もあれば,その逆の立場になる場合もあるでしょう。

 

自分たちがいきている世界に疑問をもつことは難しいかもしれません。それが当たり前であると無条件にみなしてしまうので。

 

しかし,そのような態度がときとして恐ろしい現実を生み出す可能性もあるのかもしれないと嫌でも感じさせられるような物語の構成です。

 

最後に全体を通して

 

読了した後の感情はあまり良いものではありません。正直なところ,悶々とした気持ち,暗澹たる気持ちになりました。

 

表紙のカセットテープはまさに原題と関連しているのかということを発見したことくらいが唯一の楽しさを感じた部分かもしれません。

 

この作品は何度か読み返しました。二度目以降になると,語り手のキャシーの現状を知ったうえで回想を読んでいくので,より暗い感情を抱きそうになります。

 

ここまでややネガティブな側面を書いていますが,本作を読んでよかったなと思います!

 

カズオイシグロ作品の最高傑作であるかどうかは著者の作品を読んだことの少ない私自身には判定できませんが,テーマ設定,物語の展開の仕方,結末に向かう何とも言えない現実,などどの視点でも良作だと感じます。

 

同時にこの記事を作成してみて,改めてもっとカズオイシグロ氏の作品を読んでみたいと思うようになりました。

 

本記事では,あまりネタバレを書いていません。ネタバレを知りたい場合は他のサイトを見てください! それよりも本作品を手に取って,読んでみるほうがより良いと思います! ネタバレを知らずに先入観なしで読んだ方が楽しめるはずです!!

 

時間があれば,そしてやる気が継続すれば,本作品の背景をネタバレありで考察するような記事を書いてみたいと思います。

 

いつまでも完成しない可能性もありますが,需要があれば頑張ろうと思うので,とりあえず期待せずに待ってくださると幸いです。

 

ぜひ作品を読んでみてください!

 

さて,本日は2月4日なので西の日!

 

西日本で行ってみたい場所は?

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行ったことない場所を書こうと思ったのですが,色々考えて何度か行ったことのある厳島神社にします!

 

改修工事が概ね終了したと最近の報道で聞いたので。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!