「女教師は二度抱かれた」を観に行きました。全部で5回行くうちの、1回目です。
松尾スズキの舞台は、チケットがなかなか取れないことで有名ですが、私はまだ一度も、松尾スズキの作品に接したことがありませんでした。
You Tubeで大人計画の舞台の映像をちらっと見た感じでは、若干理解しにくい笑いのような気がしたのですが、実際に見てみたら、決してそんなことはありませんでした。
ラストに至るまでに散りばめられた笑いの数々は、本当に面白くて、客席で遠慮なく笑ってしまいました。
ただ、ラストを歌で終わらせたのが、舞台慣れしていない私にはどうも、結末をごまかしたようにしか理解できず、何となく残念でした。それを理解できない自分も、残念でした。
例えば、「舞妓haaaan!!!」の脚本は、同じ大人計画の宮藤官九郎ですが、これも最後は、主要登場人物が歌って踊って終わっていました。あれを見た時に「これは舞台の手法なのかな」などと勝手に理解したのですが、今回もこれに近いものを感じました。
しかし、これを「舞台の手法」と断言してしまうのは間違っていると思います。舞台でも、歌も踊りもなく、起承転結がはっきりしているものもたくさんあるからです。
話は少しそれましたが、ラスト以外は充分楽しめる内容でした。あと4回観るうちに、ラストに対する感想も変わってくるかもしれません。

次に各役者さんについて。まずは主演の市川染五郎。私は、舞台では、劇団☆新感線に客演している姿しか知らないのですが、新感線ではその身体能力を生かした、たちまわりの多い役ばかりでした。しかし今回は、覇気のない、過去を封じたダメな男の役です。このオーラのなさには驚きました。パンフレットで、松尾スズキが「小さい頃から舞台に立って、いつでもピシッとするように育てられてきた人が、だらしない役をやることは本来とても難しい」というようなことを書いていました。それは全くそのとおりだと思いますが、あれではちょっと訴えかけてくるものが薄すぎるのではないかと感じました。オーラを消しすぎたのではないかと。それも、私の感じ取る力が足りなかったせいというのもあるかもしれません。

同じく主演の大竹しのぶ。精神を病んだ女性の持つ、さまざまな感情、表情を、こわいくらい上手く表現していたと思います。それが、立ち居よりも、声で表現されていたことが、特に興味深かったです。大竹しのぶの舞台を観たのははじめてですが、もしかすると、今回の役はそれほどハマリ役ではないのではないかと感じました。もし、完全に役とはまったら、もっと圧倒されるパワーを感じることができるのではないかと、勝手な想像をしてしまいました。この役でこれくらい素晴らしいのなら、アタリ役なら一体どうなってしまうのでしょうか。まだ初日から3日目だったので、セリフの言い直しなどもありましたが、これから千秋楽に向けて、ますます役に近付き、一層力強いお芝居を見せてくれるのではないかと楽しみです。

次に阿部サダヲ。生の舞台で見たのは2度目ですが、舞台に出てくると、やはり舞台の空気が変わります。ああいう、ハイテンションな役をやらせたら、上手くやらないはずはない。もう、私たちは完全に安心してその演技を見ていることができます。阿部サダヲをみていると、「時代の寵児」という言葉が思い浮かびます。人を惹きつける力を、怖いくらい持っていると思います。でも、これから何年経っても、常にその時代の寵児であって欲しいと思います。

他の役者さんでは、グループ魂のフロントメンバーである、村杉蝉之介。登場したとき、私の後ろの席の人が「かわいい!」と言っていました。特別にかわいい顔立ちでもないのに、声や動きが「かわいい」と私も思いました。踊りなんかも、コミカルな動きがとても楽しかったです。

皆川猿時は、グループ魂での「カヲルさん」っぽい感じで演じていたように見えましたが、ぜひ今度、シリアスな役を演じている姿も見たいです。もちろん、今回のお芝居も、キャラクターがいきいきしていて、とても面白かったです。
今回はじめて知ったのですが、浅野和之の芸達者なことにはとても驚きました。「撃たれたカモシカの真似」には会場からも拍手が沸き起こっていました。

それから、最近色々なところで見かける、荒川良良。この人も、阿部サダヲ同様、出て来た途端に何か得体の知れないオーラを発して、舞台上の空気を変えたので、思わず圧倒されてしまいました。出てくるだけで笑いが起きたのは、この2人でした。

そして脚本の松尾スズキ。ちょい役で3役くらいこなしていましたが、出てくるたびに会場中、大爆笑でした。「マンハッタン・ラブストーリー」に出ていた時は、あまり演技が上手だとは思わなかったのですが、今回のお芝居では、おいしいところをかっさらって行って、踊りも面白いし、演技も面白いしで、「役者」としての実力も、見直してしまいました。
生意気な感想をたくさん書きましたが、あと4回でどんな風に舞台が変わって行くか、そして私の感想もどう変わって行くか、自分でも楽しみです。