浅田次郎の作品で有名なのは「鉄道員(ぽっぽや)」「壬生義士伝」「椿山課長の七日間」などでしょうか。私が好きなのは、何と言っても「天切り松闇がたり」と「蒼穹の昴」です。「蒼穹の昴」には爆発的に引き込まれましたが、話の最後の最後で若干失速した感じがしないでもないのが残念といえば残念・・・。とにかく、全4巻の最初の2巻は圧巻です。wikipediaで調べたら「浅田次郎の最高傑作との評判が高い」「本人も『この作品を書くために作家になった』とコメントしている」とありました。
「天切り松闇がたり」は第4巻が発売されたので読みましたが、やっぱり面白い。
時は大正。盗られて困らぬ天下のお宝だけをターゲットにする伝説の義賊「目細の安吉」を頭とした盗賊たちの物語。彼らはみんな「二つ名」を持っています。屋根瓦を剥いで天井から盗みに入る「天切り」という技を持つ主人公は「天切り松」。「目細の安吉」は読んで字のごとく、目が細く眼光鋭いところから来ている二つ名です。他にも黄不動の栄治、振袖おこん、書生常、説教の寅弥など、二つ名を持つ安吉一家の盗賊たちは、一挙手一踏足、投げる言葉の一つ一つがとにかくかっこいい。一言で言うと「粋」なんです。
基本的に1話完結で読みやすく、どの作品も面白いですが、読んでみればお気に入りの「珠玉の一話」が必ずみつかるはず。数年前にドラマ化されたときは、天切り松のお姉さん役を井川遥がやっていて、薄幸の美少女役がぴったりはまっていました。その、お姉さんの出て来る話は泣けます。こういう泣ける話があると思えば、読者をびっくりさせるような仕掛けのある話もあり、変化に富んでいて飽きることがありません。
浅田次郎は「平成の泣かせ屋」と言われているらしいですが、確かに「この、お涙ちょうだい作家め!」と思っても、やっぱり泣いてしまうからクヤシイです。まあ実際は、お涙ちょうだい傾向が強すぎたり、愛情が暴力に変わる表現が分かりにくかったりすることも多々あるのですが、でも基本的にはどの作品も読みごたえたっぷりで面白いです。