「黒白」は剣客商売の主人公秋山小兵衛が若い頃の話で、物語は小兵衛と真剣での勝負を挑んだ剣客、波切八郎を中心に進んで行きます。八郎は、実直この上ない剣客でしたが、やむを得ぬ理由から、門人を斬り殺します。そこから彼の人生は、留まるところを知らず変転して行きます。この物語は、八郎を中心とした「出会いと宿命」について語られていきます。
私たちは、様々なコミュニティーに属していますが、その中では、比較的気が合う人を選んでつきあうのが普通です。しかし世の中には、否応なく関わりを持たされ、様々な事情から、いかにしても離れられない関係になってしまうことがあります。
他者から無理強いに関わりを持たされた人同士が、いつの間にかお互い離れがたく共感して行く。そうなると、その出会いに、運命とか宿命というものを感じずにいられません。
しかし「黒白」は、それを美談としていません。八郎と、浪人岡本弥助の出会いもまた稀有なものでしたが、主に命ぜられて刺客となった岡本は、小兵衛に斬殺されてしまいます。一方、勤め先の主人から、八郎を騙すことを強いられたお信は、終生を八郎と共に過ごすことになります。
かたや死に、かたや終生を、愛する人と生きる。出会いも運命も、かくも皮肉なものかと、痛感させられる作品です。