過日のSNSブックカバーチャレンジ | 飲水思縁〜台湾華語・台湾茶人文教室準備中

飲水思縁〜台湾華語・台湾茶人文教室準備中

飲水思源とは中国語の四字熟語で、
水を飲んで、その源に感謝の気持ちを抱くということです。

お世話になっている日本で、
生まれ育った台湾の良さを伝えていくことをライフワークにしています。

台北に帰って10日目、つまりまだ自宅待機中の10日目です。
 
コロナウイルスの影響で、帰国して2週間の自宅待機を行わないといけないんです。自分だけではなく、人々の生活様式も大きく変わっていくと予感しています。
 
インスタでのライブ配信とか色々企画してはいるものの、自分の時間もたくさん増えたので、今後どうしていくかという自己分析や、興味関心と適性への再確認、心の断捨離などを少しずつこれを機に行っています。
 
ちょど1ヵ月前のGW中に流行りのブックカバーチャレンジが回ってきて、インスタグラムとFacebook両方で楽しく語らせていただきました。ブログでもアーカイブを残そうと思いますが、詳しい内容はやはりインスタグラム「飲水思縁*茶日記」(→)からアクセスいただき、ご覧いただきましょう。
 
ここでは、7日間7冊の紹介と、私の活動で影響を受けたもう3冊の遺珠、計10冊をご紹介します。
 
Day 1・杉本博司『苔のむすまで』

まずはいきなり目指しているところを見せましたw杉本博司の本はこれを含め、3冊も持っています。架空の割烹「味占郷」で床の間や器のコーディネートと、建築関係がありますが、杉本がそこに行けたのは、この本でしっかり下地を作ったからだと考えています。


 

Day 2・金庸『天龍八部』


私を文学の世界に引きずってしまったきっかけとなった本を紹介します。中学校時代に読んだ金庸全集です。特に『天龍八部』の構成は素晴らしくて愛読していました。


金庸はいわゆる武侠小説の大家です。武侠小説は日本語で言うと、「ひと前の世代のラノベ」・中華ロマンの感覚に近いですかね。中学校まで趣味が読書と無縁だった私は、金庸のおかげて、本にどハマりました。今は漢詩・漢文をベースに中華文化をやっているのも、その時からの影響だと思います。


また、中国語の語彙力に大変役に立つ本でもあると思います。大学に出会った日本華僑の友人は、小学校から日本の学校教育を受けたにもかかわらず、違和感なく私たちと中国語を話せたのも、金庸の武侠小説のおかげだと言っていました。


この小説は今、台北の実家に眠っているため、母に頼んだら、背表紙を撮ってくれました。


 

Day 3*ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』

*写真は中国語版となります


これは文学の意義を私の中に刻み込んだ名作です。高校時代は今よりも本をたくさん丁寧に読んでいました。あの時に小説の分析を目指していた私は、この本を押さえておいたら、濃密な内容と語り口に長い時間動かされてしまいました。13年前の読書だったんですが、そのまま感覚だけは残しており、実家でまたこの本もめくってみたくなりました。


 

Day 4・大岡信『あなたに語る日本文学史』


日本に留学するきっかけとなった時期に愛読した本を紹介します。上智大学国文学科に交換留学していた時の教科書でした。しっかりした韻文の歴史を大岡先生独自な語り口で語りかけてくれます。文章は専門書よりも散文や軽い評論に近いもので、ネイティヴでない私にとってもすらすら読めた文章です。


日本に長くいればいるほど、日本文化や日本語へ知識の欠如を感じています。段々日本語に残っている漢詩文の方に特化していますが、まだ時折こういう純日本的な要素に触れてみたいです。


 

Day 5・川内倫子『うたたね』


ここ数年の関心を示します。東京都写真美術館は都内でお気に入りのミュージアムの一つです。ある時、3階の企画展で川内倫子の作品を見たら、写真集を即購入しました。


これからやや長い話になります。2015年の年末に高円寺のGallery Cafe 3(以下、スリー)に出会い、2016年の夏に初めて仮スリーでお茶会をしました。その時に店主から「アートは表現です。お茶も表現だと僕は思いますよ!」という一言に刺激され、「表現は一体何だろう」と疑問を抱えながら、スリーで試行錯誤を繰り返してきました。


スリーとの出会いは絵描きになれなかった幼少期の記憶と重なり、アートへの関心を拾い直してみたきっかけでもあります。そこで、写真というツールはふらっと始められるものの、センスを「表現」できるようになるには結構練習を重ねないといけないので、写真の勉強に興味を持ち始めました。


写真という表現を通して、お茶の表現を考えている私です。こうして、スリーで少しずつアーティストやアート愛好家の仲間も増えています。


そして、写真で出会った杉本博司や川内倫子から大きなヒントを得ています。川内倫子からもらったキーワードは、流れ行くこと、空気感と癒しです。


 

Day 6・陳依文『浮沈展眉』

*日本語版なし


この本は残念ながら、日本語版がありません。誰かの紹介でもなく、台北の本屋でも見かけたことはなかったこの本と偶然、出版社で出会いました。


印象に深かったのは、中国茶マニアの方ならきっと誰しも憧れてしまう「午時茶」や「午時水」(端午の節句の正午に採った茶や汲んだ水)のことを鋭敏な感性と詩的な文字で綴った文章です。また、茶葉枕の発想や、花を浸った水で愛玉子を作ることなど、感性と暮らしを豊かにする方法も教えてくれました。


洗練な古典文学リテラシーを駆使しながら書いた茶の散文は、また高度な人文的な観察によって、単なる文字遊びに流されず、しっかりと茶のあるべき姿を伝えている美しい世界を描き上げたようです。是非、中国語のわかる読者にオススメしたい1冊!


 

Day 7・高橋忠彦『現代語でさらりと読む茶の古典 茶経・喫茶養生記・茶録・茶具図賛』


大学院で明代茶文化を研究している私は、著者の高橋先生の下で、6年間お世話になってきました。指導教官だから紹介するわけではなく、茶文化研究に高みを示してくださった先生のお仕事に敬意を表すために、著書を最後に紹介することにしました。


「さらりと」読ませるための工夫は、先生の深い教養を感じています。『茶経』の話は沢山触れられていると思いますが、原典に当たってみて、わかりやすくて正確な訳を読んでみませんか?


初日の杉本博司は私にとっての到達点となると、最終日の高橋先生は今現在努力すべき方向性です。


 
構成として、Day1はここまでやってきた人生では、目指しているところを示し、Day2-Day4はお茶に出会う前にどっぷり文学にはまってきた軌跡で、Day5はお茶に出会ってから努力つつある参考の写真集で、最後のDay6-Day7は茶文化の関連書です。
 
この7冊に、最終日の高橋先生のみはリアルでもお付き合いのある方で、なるべく「知り合いだから挙げよう」というのを避けた拘りでやってきたけど、やはりこういう執着心に遺珠がありました。
 
次の3冊遺珠も茶文化や茶芸という表現を紹介するたびに挙げている書籍ですが、3冊ともの著者か翻訳チームのメンバーと親交があります。
 
遺珠1・岩間真知子『喫茶の歴史 茶薬同源をさぐる』(大修館書店)
 
茶の最古の歴史文献からたどり、薬との関係性を探りながら、入念にまとめてくださった本です。茶文化研究では大変参考になっています。
 
 
遺珠2・高仲健一『山是山 水是水』(自然堂出版)
 
2月の中国茶研究会「五感茶芸」でもこの本をご紹介しました。著者にそのつもりはないと思いますが、私はこの本を茶淹れの心得として考えています。
 

「五感」を澄ますために参考になった以下の一文も付け加えます。

 

「心を開き、目を明らかにす。北斉の顔之推の撰になる顔子家訓の勉学篇に、読書学問する所以として、こう述べられています。情報過多で混乱の様相を呈する現代にあっては、こんな単純な言葉に、グッとくる人も結構いるのではないでしょうか。」(133ページ)

 
 
遺珠3・李曙韻『茶味的麁相 中国茶のこころ』田中優伊翻訳(角川書店)
 

「茶は飲みやすく甘いことが重要視され、渋味は違和感のように思われる。しかし、想像を広げてほしい。舌の上に残る茶の渋味。飾り気のない天然素材を使った茶席が与える印象の渋さ。全てが茶人の眼を手に入れるためのパスワードとなるのだ。」(24ページ)

 
味覚の「渋み」から李さんの「わびさび」のような世界観をリンクしてくれた引用です。この一致性も茶席作りで参考になりました!
 

 

このブックカバーチャレンジを書いて、僭越ながらも最終日に岩間真知子先生にバトンを渡してしまいました。そこからやり取りしていました。世の中の本を読み切れることは不可能で、「やはり何かのご縁で、導かれていくのでしょう」と岩間先生が教えてくださいました。

 

これだけ挙げたが、ほっとひと息をついたのではないでしょうか。

 

 

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