「防衛株」と呼ばれる会社の事業利益を開けてみたら、6割強をエナジー部門が稼いでいた。

 

三菱重工の2026年度第1四半期は、全社の事業利益が1596億円で、そのうち、発電用ガスタービン、原子力、航空エンジンなどを含むエナジー部門は1013億円で、単純計算で約63%。

戦闘機、ミサイル、艦艇という言葉から受ける印象に比べると、中で回っている利益はずいぶん違う。

「防衛株」という名札を付けた巨大な道具箱を開けると、一番大きな場所に発電設備が入っているようなもの。

 

もちろん、防衛事業が小さいわけではないし、政府の防衛費拡大を受け大型の仕事が増え、航空・防衛・宇宙部門も第1四半期に増収増益となっている。

 

ただ、全社の利益を一つのテーマだけでみると、発電設備やデータセンターの電力需要が見えなくなる。

 

株式市場は会社へ短い名前を付けたがって、「AI株」「半導体株」「防衛株」と呼べば、ニュースと株価を一本の線で結びやすい。

 

しかし、名札は便利すぎて、ときどき中身より大きくなることも。

 

三菱重工の場合、防衛とエネルギーは無関係な同居人でもなく、どちらも巨大な機械を長期間つくり、納入後の整備やサービスまで続く。

 

しかし、受注が増える時期も、利益が計上される理由も同じというわけでもなく、2026年度第1四半期のエナジー部門では、複数の発電関連事業の売却益や長期工事の売価確定による一時的な利益も含まれていた。

 

だから「利益の約63%がエナジー」という数字も、会社が永久にその割合で稼ぐという意味ではないし、それでも、名札と決算書のずれを見つけるには十分。

 

企業を一語で分類する行為は、分厚い本の背表紙だけを読んで内容を想像することに似ていて、けっして間違いではないが、発電設備の章が全体の6割強を占める本を「防衛の本」とだけ呼べば、読み終えたときに別の本だったような気分になるはず。

メッセージが届いた振動がポケットで鳴る。

画面を見なくても、誰からか分からなくても、指は勝手に画面をスワイプしている。

 

「あ、後で返そう」

 

そう思ったはずなのに、頭の片隅にはずっと小さな通知マークが残り続け、結局、移動中のエレベーターの中や、レジの待ち時間の数秒を使って、大して急ぎでもない返信を打ち込んでいる自分に気づく。

 

私たちは一体、何に追われているのだろう?

 

 

数年前まで、メールの返信は「今日中」か「明日まで」で十分だったはず。

 

それがメッセージアプリの定着とともに「数時間以内」になり、今や「数分以内」が暗黙の了解のように漂っている。

 

カフェで隣の席に座った人が、コーヒーに手を伸ばしながら片手で凄まじい速度のフリック入力を行っているのを見かけるし、相手からの返信も即座に返ってきているようで、もはや会話というよりは、リアルタイムの卓球のラリーのよう。

「待たせる罪悪感」の正体

なぜ私たちは、それほどまでに即レスにこだわるのか?

そこにあるのは「仕事ができると思われたい」という前向きな意欲ではなく、「返信を寝かせると、相手に後回しにされたと思わせるのではないか」という不安で、相手への配慮という名の「自己防衛」でもある。

 

通知を消さない限り、タスクが未完了のまま脳のメモリを占有し続け、その不快感から逃れたくて、私たちは思考を挟まずに「了解です!」「ありがとうございます!」と打ち返す。

 

結果として残るのは、内容の薄いラリーと、なぜかドッと押し寄せる精神的な疲労感。

 

本来、テキストによるやりとりは「自分の好きな時間に送って、相手も好きな時間に読む」という非同期型の利便性を持っていたはず。

 

しかし、「既読」機能やオンライン状態の表示、さらには通知の到達速度の向上によって、事実上の「リアルタイム拘束(同期)」へと変質してしまった。

 

電車のホームで電車を待つ3分間。

 

以前ならぼんやりと看板を眺めたり、今日の夕飯の算段を立てたりしていた時間が、今ではすべて「未読メッセージの消化」に充てられている。

 

誰とも会話していないのに、頭の中は常に誰かの言葉で満たされていて「すぐ返せる便利さ」を手に入れた代わりに、私たちは「一人でぼんやりと思考を巡らせる時間」を手放してしまったのではないだろうか?

自分のペースを取り戻すための、小さながんばらない選択

この「即レスの呪縛」から抜け出すのは、思っているほど難しくないはずで、世の中の99%のメッセージは、実は1時間後に返しても何の問題も起きないものばかり。

 

もし1分以内に返さなければ破綻する関係や仕事があるとしたら、それはシステムか関係性の設計自体が壊れている。

 

通知をOFFにしてみる、スマホをカバンの中の奥にしまう、あるいは、メッセージを見てからあえて「5分間はお茶を飲んでから返す」と決めてみる。

 

相手のテンポに自分の人生の時間を明け渡さないこと。

 

この小さな間を作れるようになると、ポケットの中で鳴る振動に、必要以上に煽られなくなくなる。

昔はうるさい方が頼もしかった。
子どもの頃の掃除機はうるさかった。

 

スイッチを入れると部屋中に音が響気渡るけど、それでも誰も文句を言わなかった。

 

むしろ「よく吸いそう」と思っていたし、大きな音には不思議な説得力があった。

 

ところが今は違う。

 

同じ掃除機でも「静かですね」が褒め言葉になり、強い音は安心感ではなく、ただのストレスに。

考えてみると不思議なもので、家電の性能は昔よりずっと高いのに、多くの人は以前より音に敏感になっている。

  • 静かなカフェ
  • ノイズキャンセリング
  • 環境音アプリ

周囲を静かにするサービスは増える一方で、もしかすると、騒がしいのは家電ではなく、スマホやSNSや仕事で、すでに頭の中が十分うるさいのかもしれない。

 

だから家に帰ったときくらいは、何も主張しない家電が好まれる。

 

強さより静かさ。

 

それは家電の話のようでいて、今の私たち自身の話にも見える。