「アランという人が書いた、幸福論はありますか?」
「アランさんの幸福論ですね」
物言いの可愛らしさに、私は彼女から買うことを密かに決めていた。
慣れた手つきでサクサク検索してゆく。
在庫を探し見つけて、小走りに戻る彼女。
「どうぞ、ご覧ください」
渡された本の文章は、昨日親友からオススメされたとおり、スッと入ってきたし、気になるのは、目の前の温かさのある人の、目の輝き。
彼女は本好きに違いない。
翻訳ものの難しさをふってみると、さらりと乗ってきてくれ、具体的な作家名さえ、さらりと彼女の口からでてくる。
「これ、いただきます」
こんな、気持ちのいい本の買い方は、ひさしぶりである。