現在のヒラ党員に対する調査、摘発は、党の方針、政策に反する見解をSNSなどで発信したことが理由とされている。しかし、じゃあ何が党の方針、政策なのかを明確にしないと、何を批判してはならないのかも分からない。

 

 摘発する側の人は、自信をもってそれを語れるのだろうか。もし、呼び出しを受けるようなことがあったら、調査する側の人に、自衛隊や日米安保の問題では何が党の政策、方針なのかを聞いてみて、ちゃんと答えられるまでは「あなたには調査する資格がない」と表明して、調査を拒否するなんてどうだろうか。

 

 まず自衛隊問題。

 

 「共産党が政権に入ったら、野党連合政権であれ民主連合政府であれ、自衛隊は合憲だとみなします」「これが共産党の方針、政策です」とSNSで発信するのはどうなのか。これに対して、「自衛隊は憲法違反で解消しようというのが共産党の立場ではなかったのか」と問われたら、「それも共産党の方針、政策です」と答えるのでいいのか。それに対して「矛盾しているのではないか」と聞かれたら、「どちらも共産党の政策、方針なんです」でいいのか。「無茶苦茶じゃないか」と聞かれたら、「だってそれが共産党の政策、方針」なんですとしか言いようがないが、それでいいのか。

 

 安保条約問題はもっと難しい。

 

 「侵略されたら安保条約第5条の発動をアメリカに求めるのが党の政策、方針です」とSNSで発信していいのか。「志位さんがそう言っているのだから間違いないですよね」。それに対して、「共産党は『安保条約は日本防衛が目的ではない』と主張してきたではないか。どう整合性をとるのだ」と聞かれたらどう答えるのか。

 

 「日本防衛は目的ではないが、それでもその目的のために動いてもらうのだ」と答えてもいいのか。「でも、日本には侵略のための部隊しかいないと主張してきたではないか。米本土から部隊を派遣してもらうのか」と聞かれたらどうするのか。

 

 それとも「安保は日本防衛のためには役立たないというのが党の立場だ。しかしそれでは国民を説得仕切れないから、仕方なく志位氏がそう述べただけだ」「本音は日米安保の即時廃棄だ、それが基本政策だ」と答えるのか。

 

 そうすると、よく勉強している有権者がいて、こう聞いて来るかもしれない。

 

 「基本政策と政策では何が違うのか。29回大会決議では、安保にかかわって2つの政策を打ち出している。1つ目は、安保の廃棄を前提とせず、核兵器禁止条約を批准して核抑止力を否定する立場(私の「核抑止抜きの専守防衛」と似ている)。2つ目は、安保条約を廃棄する立場。安保が前提の政策と安保を否定する政策を同じ位置づけでならべて、後者だけが基本政策だと位置づけるのはおかしいじゃないか。」

 

 党を代表する理論家である中祖氏、藤田氏、土井氏にはきっと答えがあるだろう。それを「前衛」なり「赤旗」で「解明」した上で、ようやくヒラ党員の調査に入れるのではなかろうか。(了)