現在の共産党内では、異論を表明するヒラ党員が摘発され、調査を受けるような異常状態になっている(それを正常だと考えていることが異常だ)。だから、私が在籍していた当時の共産党本部はそうではなかったと紹介し、励まそうと思ってこの連載を書いてきた。その上で、あと2つの問題だけを書いておきたい。
1つ。ヒラの党員をあれほど調査するなら、党幹部こそが対象になるべきではないかということだ。
現在、地方議員がいろいろ異論をSNSで述べ、批判されるケースも少なくない。同時に、匿名でやっている場合も、前後の事情を調べて、この地区の誰だということを特定し、呼び出して調査することなどもやられているようだ。
一方、この連載で書いてきたように、党中央の土井洋彦氏や藤田健氏だって、党の方針に反しているかもしれない。志位氏が2015年に復権させた自衛隊活用論って、2000年に大会で決定された際、彼らがもっとも嫌悪した理論である。その方針に忠実だった私が退職した際、党中央のなかで自衛隊活用論を述べる人がいなくなって、きっと喜んでいたことだろう。
では、現在、彼らはどうなのだろう。自衛隊活用論だけではない。志位氏は、侵略されたら日米安保条約第5条を発動するとも言ったし、政権としては(野党連合政権だけでなく民主連合政府においてもだ)自衛隊合憲だと宣言した。
その際、彼らには、その志位氏の言明を支持していたなら、「赤旗」に記事を書くこともできたはずだ。「前衛」に論文を書くことにも慣れているはずだ。しかし、この二人は何も書かなかった。書いたのは「赤旗」政治部長の中祖氏一人だけで、それも独自の記事を書くのではなく、ただ志位氏の言葉をカギ括弧付きで引用しただけだ。まあ、自分の言うことと一言一句違うことは書いていけないと志位氏から指導されているから、引用するしかできなかっただろうけれど。
もしかして、彼らの本音は今でも、自衛隊活用論に否定的なのではないか。政権としての自衛隊合憲論や安保五条発動論だって同じだろう。そして、その内心を隠したまま、その種の決定には黙って賛成し、中央委員や幹部会委員として選ばれているのではないか。
ヒラ党員の内心にまで踏み込んで本音を出させようとするなら、まずやるべきは彼ら党幹部の調査だろう。ここは、大会代議員になろうとする党員に「本音を吐け」と「指南」した土方明果氏にでも登場してもらい、志位氏のこの間の言明を並べて、それを内心ではどう思っているのか、なぜこれまで志位氏の言明を支持する文章を書かなかったのか、それらを調査しないといけないと感じる。それ抜きにヒラ党員の調査をするなんて、あり得ないことだ。(続)