さて、「赤旗」4月1日付の2面の記事である。「岩手県 中小に賃上げ支援金」「物価対策1人1.5万円」。

 

 昨日、気になることとして、「赤旗」が政府の対策をあまり評価していないことをあげた。以下の記事である。

 

「政府が中小企業の賃上げ対策として行っているのは、賃上げした中小企業の法人税を減税する『賃上げ税制』です。6割の赤字企業は使えない制度で、今回、政府は赤字の企業が5年間繰り越して黒字になったら相殺できる繰越欠損控除制度を設けるとしています。与党税制大綱も、賃上げに向けた税制措置のインセンティブが必ずしも効かないと認めています。」

 

 要するに、賃金を上げたら法人税を安くするというのが政府の対策なのだが、赤字企業は使えない仕組みなので、赤字企業が多数を占める現状では、あまり意味がないだろうということだ。与党もそれを認めているだろうと。だから、岩手がやったように、赤字企業も含めて直接支援を行い、賃上げを応援できるようにしようと。

 

 私は、一年二年限りのシステムとしては、直接支援は意味があると考える。時給を50円以上引き上げた企業には従業員一人あたり5万円を払うというのだから。企業の賃上げ意欲を引き出すことになると思う。「赤旗」記事にもあるが、小池晃さんの追及に対して、鈴木俊一財務省が「自治体の独自の取り組みとして評価したい」と答弁したとされる。

 

 一方、税制でインセンティブを与えるやり方は、赤字から黒字にならないと減税にならないので、失敗すると、賃上げはしたが減税にはならず、赤字だけが拡大することになりかねない。その結果、せっかくの賃上げも長持ちしない結果につながるかもしれない。

 

 ただ、この資本主義社会においては何が基本方向として望ましいかというと、赤字企業が努力によって黒字になり、税金も払えるようになるし、賃上げもするようになるということだろう。補助金をそのまま賃上げの原資とするやり方は、企業がそれに依存するようになると、赤字をなくして黒字にする努力を弱めることになりかねない。

 

 社会保障一般の場合は、働けない人に生活保護をずっと給付するなどのことは当然だ。しかし、ここで問題になっているのは、あくまで企業である。経営努力を行って黒字を生みだし、税金も納めるし、従業員の給与を増やすことが求められている存在だ。そういう企業を対象にした支援制度の場合、企業を企業らしくすることが基本になるのではなかろうか。

 

 しかも、いまのシステムでは、一年で黒字にならない場合も支援を受けられるよう、五年という期限を設定した。「赤旗」が指摘するように、「与党税制大綱も、賃上げに向けた税制措置のインセンティブが必ずしも効かない」と認めたので、大きく改善したのである。

 

 そういうことで、政府の支援策もかなり踏み込んだものであり、評価すべきではなかろうか。それに短期的な岩手県などの直接補助を組み合わせて、おおいに中小企業の賃上げを促進すべきだろう。もちろん、昨日も指摘した賃上げ分をちゃんと元請け大企業に転化するための努力などは、当然のことであるが。

 

 なお、直接補助がインセンティブ方式かは、他の分野でも問われる問題である。必要に応じて論じていきたい。