いよいよ大河も佳境に入ってきた。実朝殺害をどう描くのかが焦点で、ワクワクしながら見ている(以下、ネタバレがあります)。

 

 昨夜は、かなり納得して魅入ってしまった。それまでの回でも、公暁が父・頼家を殺害された怨みとか、次の鎌倉殿の地位を狙ってとか、そんな常識的な描き方がされていたが、役者の演技力もあって(佐藤浩市の息子だそうだ)、それなりの説得力で迫ってきたのである。

 

 しかし昨夜、突如、北条義時側の動機が浮上した。実朝が後鳥羽上皇から右大臣の地位を与えられるだけでなく、幕府を鎌倉から京都の六波羅に移したいと言い出すのだ。その際の義時の複雑な表情が忘れられない。

 

 ようやく武士の権力を確立したのである。たくさんの血も流れた。まだ西国で朝廷の権力が侮りがたいとき、東国を治めていることが武士の権力を保障している。権力争奪劇の激しさを知らない実朝は、朝廷の権力に近づくことで幕府を万全なものにできると、とっても甘いことを考えているが、これでは朝廷の息を吹き返させることになる。許してはならない。そんな気持が表情に表れているようだった。

 

 そうして、公暁が実朝を殺害するのを、事実上は黙認する。そして、そののち、公暁を殺害する。その結果、幕府の権力は確実なものとなり、あとは後鳥羽上皇との直接対決を残すだけになる。そんな感じの筋書きになっていくのだろうね。公暁の個人による殺害の話にしてしまうと、なぜそんなことが可能になったのか、どうしても不自然になってしまうんだよね。

 

 三谷幸喜は、人の心の動きの機微も描くし、心だけでは抗いようもない歴史の流れみたいなものも、同時にうまく描写できる。すごい人だね。