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「国政選挙での敗北は危機(ピンチ)でもありチャンスでもある。100年を迎えた日本共産党の危機は日本社会の危機でもあるという共通認識に立って、この党が新たな時代に対応する刷新ができるのか、それとも歴史のなかに埋もれていくのかをめぐり、共産党の歴史との対話を試みる』

 

 今年の7月、100年を迎えた共産党が、論壇で話題になりました。中北浩爾さんの『日本共産党』をはじめ関連本も出されましたし、新聞でも大きく取り上げられました。共産党がこれだけ話題になることはなかなかないことですし、共産党にとっては幸せだったと思います(「反共攻撃」だと言う人もいますが)。

 

 この本は、そうやって共産党100年が話題になったことによって誕生したと言えるもので、出自の特異性が際立っていると思います。誰も共産党100年を論評に値しないと思っていたら、この本が出ることもなかったということです。「日本共産党の危機は日本社会の危機でもある」というコピーが、なぜ共産党のことがあれだけ話題になったのかをあらわしていると思います。

 

 それぞれの論考を少しだけ紹介すると、……

 

 有田芳生さんは私が紹介するまでもありません。30年ちょっと前に『日本共産党への手紙』を編集して共産党を除籍され、「反党分子」扱いをされましたが、最近刊行した『改訂新版 統一協会とは何か』(大月書店)は、「赤旗」で広告が出るようになりました。共産党100年の7月に毎日新聞で「共産党100年への手紙」というインタビューが掲載されるなど、共産党を語る上で欠かせない人です。

 

 森田成也さんはマルクス経済学者で多方面で理論活動を行っていますが、社会主義協会の機関誌「科学的社会主義」(22年10月号)に、「中核と周辺の弁証法―日本共産党の創立100年に寄せて」を寄稿されました。マルクス主義者といっても共産党員だけではないわけで、同じ社会主義者であっても異なる別の視点から見ると共産党の100年はどう総括されるのかという、大変有意義な論考になっています。それを大幅に改稿したものです。

 

 木下ちがやさんは、中北さんの『日本共産党』の書評をウェブ論座に寄稿されたのですが、それを大幅にバージョンアップしてもらいました。焦点の一つは宮本路線の生成、発展、限界というところでしょうか。共産党やその周辺にいて、いろいろな運動にかかわった人にとっては、自分の体験と重なって大いに共感するところがあるでしょう。本書の「序論」も木下さんの手によるもので、立場の違った著者がどう共感し合ったのかが伝わってきます。

 

 梶原渉さんは、長く日本原水協の事務局にいた方で、渡辺治さんの「福祉国家構想研究会」でも活躍されてきました。退職して、現在は国際関係史、冷戦史の学徒ですが、運動のなかにいた方が研究者になろうとして、自分がかかわった運動を理論的歴史的に把握しようとする熱意の伝わる論文です。平和運動に携わっている人は多くいますから、今後の発展方向を考える上で大いに参考になると思います。

 

 ネット界隈では、有田さんがかつて編集した『日本共産党への手紙』のようなものはでない、知識人が総結集しているわけではない、がっかりしたというご意見も散見されますが、これはあくまで「共産党の100年史」というテーマから生まれた本です。来年にかけて共産党関連本がたくさん出てくるといううわさもありますから、ご意見にあるようなものも含まれるのではないでしょうかね。