(9条の会・新日本婦人の会・平和ネット3.5講演会の記録)

三、国民意識は世界の構造変化とともに変化した

 2、非武装中立が冷戦終焉で逆に成り立たなくなった

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 現在のウクライナ問題で誰もが認めることになったのですが、現在の世界では、他国から攻められる可能性を排除することはできません。いや、ずっとその可能性はあったのですが、戦後続くことになった冷戦の長い間、戦争は起きても非武装で構わないと思わせる構造が存在していたと思います。

 

 冷戦というのは、アメリカとソ連が、それぞれの勢力圏を守るために対峙していた構造でした。世界のどこかで米ソの死活的な争いが起きたら、そこから離れた国であっても、その争いに参加していくわけです。例えば、中東で米ソ戦争が勃発したら、極東ソ連軍も中東に向けて出動していくし、日本の自衛隊はそれを三海峡を封鎖することによって阻止する。その結果、極東ソ連軍は日本を抑えるため北海道から上陸する。そんなシナリオだったのです。

 

 だから、日本の国土と国民を守ろうとすると、二つの選択肢がありました。一つは、日米同盟を強化し、自衛隊も強大化させて、ソ連軍を圧倒するというシナリオです。でも、そうではなくて、そんな米ソ戦争に巻き込まれないよう、安保条約を廃棄してしまうという、もう一つのシナリオもあった。また、そんな大規模な戦争が世界的に戦われるもとでは、多少の軍隊を持っていても仕方ないので、非武装という選択肢も現実味があったのです。

 

 そうはいっても、後者のシナリオを支持していたのは、国民の一部ではありました。安保条約の廃棄を求める世論は、米軍の横暴が世間を騒がせると増大するのですが、それでも半分に迫ることはありませんでした。また、自衛隊については、一貫して現状維持を求める世論が7割ほどを占めていました。それでも、世間の普通の世論から見て、非武装という考え方には一つの選択肢としての地位があったと言えるでしょう。

 

 しかし、冷戦が終わって、そこに大きな変化がありました。全てを米ソの冷戦というフィルターで見る時代が終焉してみると、もともと存在していた対立構造が見えてきたといえばいいでしょうか。日本に即していうと、北朝鮮との対立関係は戦後からずっとひきづっていた問題でしたが、北朝鮮が核・ミサイル開発に邁進することによって、ただ対立しているというだけではなく、現実味のある脅威ということになってきます。中国との間でも尖閣諸島の問題はずっと存在していたのですが、中国が海洋進出する能力を向上させてくると、目の前で脅威が迫ってくることになる。

 

 大事なことは、これら北朝鮮や中国との間の問題は、日米安保条約があるから対立が生まれている問題ではなく(多少は関係しますが)、安保がなくても対立はあるのです。逆に、安保があってアメリカに頼らないとうまくいかないのではと、かなりの人が思うようになりました。

 

 攻められたらどうするのだという国民の疑問に対して、「安保があるから巻き込まれるのだ」という答えでは対応ができなくなった。そういう時代にふさわしい回答が求められるようになったということです。(続)