「自衛隊活用批判に反論 志位氏」——。昨日の時事通信の配信記事だが、志位さん、本当にこんなことを言ったのだろうか。誤配信ではないのだろうか。

 

「共産党の志位和夫委員長は10日、東京都内で講演し、有事の際に自衛隊を活用するとした自らの発言をめぐり他党から批判の声が出ていることに関し、『急に言い出したことではない。2000年の党大会で決定し、綱領に書き込んでいる方針だ』と反論した。

『批判をするときは勉強してからにしてほしい』とも語った。」

 

 いや、どんなに勉強したところで、自衛隊の活用が「綱領に書き込んでいる方針だ」なんて言えないのだから、党首である志位さんがそんなことを言うはずがないのだ。綱領において自衛隊が出てくるのか以下の3つの箇所だけである。

 

「日本の自衛隊は、事実上アメリカ軍の掌握と指揮のもとにおかれており、アメリカの世界戦略の一翼を担わされている。」

「軍事面でも、日本政府は、アメリカの戦争計画の一翼を担いながら、自衛隊の海外派兵の範囲と水準を一歩一歩拡大し、海外派兵を既成事実化するとともに、それをテコに有事立法や集団的自衛権行使への踏み込み、憲法改悪など、軍国主義復活の動きを推進する方向に立っている。」

「自衛隊については、海外派兵立法をやめ、軍縮の措置をとる。安保条約廃棄後のアジア情勢の新しい展開を踏まえつつ、国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる。」

 

 どこにも自衛隊活用なんて書いていない。志位さんは時事通信に抗議すべきだな。

 

 一方、綱領を見て大事だと思うのは、自衛隊が憲法違反だとも書いていないことだ。「憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)」という表現は、内容的にはそれに限りなく近いが、「違憲だ」というキツイ表現とはかなり趣が異なる。

 

 さらに大事なのは、その自衛隊も「解消する」というものではないことだ。「解消に向かっての前進をはかる」という表現は、それに向かっていくという意味であって、解消するということとはまったく異なっている。

 

 綱領って、世界と日本の問題を社会科学的な見地で分析し、路線を提起するものだから、「憲法や法律がこうだから」ということで変革の可能性を閉ざすような書き方はしない。変革の障害になるなら憲法・法律だって変えればいいのだから。自衛隊問題に限らずどんな問題も同じであって、したがって綱領には「違憲」だとか「憲法違反」という表現も出てこないのだ。

 

 だから、自衛隊は違憲で解消すると言い続けてきた人が何を言っても説得力に欠けることがあるけれども、この綱領をベースにして自衛隊問題、憲法問題で新しいアプローチをとれる人が表れれば、共産党は野党共闘の問題でも新しい地平に立つことができるのではなかろうか。この問題での私のアプローチは、何か月後かにまとまって示すこととしたい。