(9条の会・新日本婦人の会・平和ネット3.5講演会の記録)

二、それでも憲法9条を守る意味はどこにあるか

 3、乖離の根本原因である世界の構造変化を学べる

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 第二次大戦直後、日本国民の平和世論は相当大規模なものでした。1960年の安保闘争の広がりも歴史的なものでした。そうはいっても、安保反対勢力が国会議席の半数を超えたことはないし、安保反対が世論調査で半数を超えたこともないので、容認勢力が多数だったとはいえ、反対側にも無視できない広がりがありました。

 

 しかし、戦後77年がたって、そこに大きな変化が生まれています。自衛隊を認める人も多数なら、日米安保条約を認める人も多数です。安保についていえば、地位協定を改定して米軍の横暴に規制をかけることについては世論の多数を占めることがありますが、日本の平和のために安保が必要だという世論は、かなり強固な多数になっています。

 

 そういう世論があるのは、国民が間違った認識をしているのでしょうか。そうではないと思います。戦後の平和運動が開始されたときと現在では、世界の存在そのものが変わっているからそうなるのです。護憲派は、その世界の変化を正確に捉え、対応していかなければなりません。

 

 戦後の世界の変化の話は、次のところでやりますが、現在、ウクライナ危機でわれわれが直面しているのも、かつてない規模での世界の変化だと思います。どういうことでしょうか。

 

 こういう問題が起きるとよくでてくる議論の一つに、国連安保理で何かを決めようとしても、拒否権を持つ国がいて国連が機能していないということがあります。そうはいっても、今回、緊急特別総会で140か国がロシア批判に回ったり、経済制裁が大規模に実施されたりして、かなりロシアを追い詰めていることを我々は目にしており、これは国連が機能していることのあらわれだと思います。しかし実際、ロシアが拒否権を行使すれば、ロシアのいやがることはできないわけですから、現在の国連の仕組みに問題があることは事実です。これまで、安保理ではなく総会の機能を高めようとか、安保理が拒否権を行使できる議題を制限しようとか、いろいろな提案が学問レベルでは提唱されましたが、そういう改革も拒否権を持つ国が反対すればできないので、現実味のないものとして考えられてきた。

 

 今回のウクライナ危機について、私も当初、ロシアが拒否権があるから国連改革をやろうとしても無理だと思っていましたが、最近、もしかしたら国連や国連憲章の大変革につながるような事態に我々は直面しているのではと感じ始めています。もしかしたら、国連を改組して、新国際連合ができるかもしれないような問題ではないのかということです。

 

 だって、最初の国際平和組織である国際連盟ができたのは、第一次大戦でドイツが敗北した高揚感のなかでの出来事でした。しかし、国際連盟の努力にもかかわらず、第二次大戦がぼっぱっつし、侵略したドイツや日本を「敵国」と憲章で規定する(いわゆる敵国条項)国連が結成されました。安保理の常任理事国はすべて戦争でドイツや日本を敗戦させる側に追い込んだ国です。

 

 現在のウクライナ戦争はどうなのか。我々が目にしているのは、常任理事国であるロシアが大規模な侵略をしているという現実です。そんなロシアを常任理事国にしたままでいいのかと、多くの人は考えるでしょう。多くの国家もそう考えるでしょう。私だって、こんなロシアが大きな顔をする国連を信頼できません。

 

 それならば、ドイツを敗北させて国際連盟をつくり、ドイツと日本を敗北させて国連をつくったように、この戦争を通じて、ロシアを「敵国」とするような新しい国際組織をつくらなければならない。そんな国際世論が形成されるような気がします。140か国をベースにもっと支持を広げれば、現在の国連を解体して新国連をつくるのは、そう難しいことではありません。建物や仕組みは現在のものを引き継げばいいのですから。

 

 平和を考える、平和のために行動するということは、そんな世界の変化を学ぶことでもあります。9条の会がやらなければならないことは、そんな壮大なやりがいがある事業なのではないでしょうか。

 

 本日から出張なので、明日のブログはお休みします。(続)