(9条の会・新日本婦人の会・平和ネット3.5講演会の記録)

二、それでも憲法9条を守る意味はどこにあるか

 1、自分の信念を最後まで貫くことは大事である

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 さて、これまでお話ししたように、9条をめぐる情勢というのは、護憲派にとってそれなりに深刻です。最後に述べたように、捉え方次第という面はあるにしてもです。

 

 それでも、9条の会の方々は、あきらめずに9条護憲を訴えています。先ほど、司会の方がおっしゃいましたが、ウクライナ危機が起きたあと、署名を集めようとしていると、「ウクライナ問題は9条では国を守れないことを示したんだろ」と罵倒されていますが、それでも集めている。

 

 私は、信念を貫くことは大事だと思います。極端な話になりますが、たとえば戦前、日本の侵略戦争に反対する立場を貫くことは困難で、そういう人々はみんな投獄され、そういう組織は消滅しました。それでもそういう人々が存在したということは貴重であって、日本にも戦争に反対した人がいたんだということは、戦後の日本国民に明るい希望をもたらしたと思います。

 

 では、ウクライナ問題では、これはどのようにあらわれるでしょうか。日本には9条があるからということで、日本の支援は非軍事に徹してという立場があります。医療や食料などを徹底的に重視しようということです。

 

 しかし、キエフが包囲されようとしているいま、常識的に考えて、軍事的手段の介在なしでは医療や食料も届けられません。大事なのは、ウクライナに人を守ることなのか、それとも9条の精神だからとして非軍事を守ることなのか。

 

 私はウクライナの人を守ることが最優先だという立場です。軍用機でないと食料を届けられないのなら、軍用機を活用するという立場です。9条というのは、まさか人命を軽視するようなことは想定していないので、これも9条に合致すると考えます。

 

 そう考えないで、あくまで非軍事でという人もいるでしょう。そういう方には、是非、わが「自衛隊を活かす会」の呼びかけ人である加藤朗さんが提唱する「9条部隊」のことを知ってほしい。彼も、日本の国際貢献がPKOなど自衛隊で行われていることに疑問を呈していて、道路をつくったり橋を架けたりするのは、自衛隊よりも建設労働者のほうがずっと上手なのだからとして、非武装の「9条部隊」を結成して派遣することを提唱しています。退職者がやればいいではないかと、連合などに提案しているそうです。連合には賛同を得られないようですが、それなら9条の理想に燃えた人々が実践することはあっていい。非武装、非軍事の思想というのは、もともと侵略されても丸腰で抵抗するというものですから、覚悟が求められるのです。

 

 そうやって、9条を守るということと、ウクライナ人を死なせないということを、どう結合するのか。いろんな模索があってもいいと思います。問題は、どちらかだけではいけないということでしょう。