韓国とは闘わず、仲間内だけで盛り上げた安倍さんだが、痛いしっぺ返しを食らうことになった。昨年7月始め、ユネスコの専門家が産業遺産情報センターに視察に来て、展示に問題があると判断したのだ。

 

 そして、世界遺産委員会は昨年7月22日、決議を採択した。「暗い側面」を見学者が理解できるような「多様な証言」を提示しようとしておらず、犠牲者の説明も不十分であるとして、「強い遺憾の意(strongly regret)」を表明するものだった。そして、意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者らがいたことや日本政府の徴用政策について理解できるような措置を取りなさいというものである。

 

 さらに、この決議に対してどういう措置を取ったのか、今年の12月までに報告を求められている。どんな報告が準備されているのか、今のところ情報はない。

 

 おそらく安倍さんは、あとでユネスコが何を行ってきても、登録された遺産が取り消されることはないと踏んでいたので、「堂々と」展示内容に欠落をつくったのだろう。実際、登録済みの遺産について、別の国から異論が出たからといって取り消された事例はないらしい。取り消された実例は、あくまでその遺産が水没したとか、遺産としての価値がなくなった場合だけということだ。

 

 だから安倍さんは、余裕のよっちゃんだったわけだ。ユネスコの決議も無視するつもりだったのだと思われる。ところがその安倍さんの余裕が、佐渡金山を登録しようとすることによって、大きなカベに直面することになる。

 

 明治の産業遺産で約束を守らない日本が、佐渡の金山で同じ約束(「意思に反して」「働かされた」ことを展示するという約束)をしたというだけでは、委員会は登録を承認することができないだろう。当然である。

 

 ところが安倍さんは、この問題についても何も語らない。自分が総理大臣として決裁したことが、こんな逆襲にあっていて、佐渡金山登録の障害になるであろうに、何も言おうとしない。

 

 産業遺産情報センターは安倍さんの肝いりでつくったものだから、安倍さんの意向を抜きにして、展示内容の追加はできないだろう。ユネスコの求めに応じるような展示を追加すれば、安倍さんの歴史戦は敗北である。追加しなければ佐渡金山の登録は暗礁に乗り上げる。

 

 どう決着していくのか、すべて安倍さんにかかっているのに、安倍さんには堂々と語れるものがない。弱腰のままなのである。自分を戦う立場に置けないのである。4つ目の弱腰だ。(続)