昨日、台湾有事になると世界経済が壊滅的な打撃を被ると主張しても、立場が違うと、全然違って受け取られるという話を書いた。だからアメリカは軍事介入を止めろという立場か、中国は台湾の武力解放方針を放棄しろという立場かを言わないと、誤解が生じるのである。

 

 これって、他の問題でも同じようなことが起きる。最近痛感したのは、自衛官の人権問題である。

 

 私の友だちに、弁護士で、自衛官の人権問題を裁判で闘っている人がいる。本当に熱心で、自衛官の自殺やいじめなど、本人や親(自殺した場合は本人は原告になれないから)の相談を受け、真剣に闘っている。

 

 その友だちに対して、別の弁護士や市民団体から、疑問、批判が寄せられることがあるそうだ。「自衛隊を、自衛官の人権が守られ、過ごしやすい職場にすることでいいのか」というものである。

 

 それを聞いたとき、最初、何が問題なのかが分からなかった。自衛官の人権が守られる職場をつくるって、当たり前のことではないか。

 

 しかし、同じように自衛官の人権問題を扱う団体でも、違った考え方でやっている場合もある。自衛隊というのは自衛官の人権を侵害する組織だ、どこまで行ってもそういう本質的な問題があるのだということを、批判と糾弾の対象にするような場合である。

 

 こういう場合、自衛隊が自衛官の人権を尊重する組織になってしまうと、糾弾することができなくなって困るのである。そういう立場に立ってしまうと、自衛官の人権問題を本気で裁判で闘うような弁護士は、少し疎ましく見えるということなのである。

 

 まあ、でも、本気で自衛隊は人権を尊重する組織にはならないと信じていたら、裁判を通じて自衛隊が変わっていくこともあり得ないと信じればいいんだけどね。もしかしたら変わることもあるかもしれないという不安(?)が根底にはあるのかもしれない。

 

 本日の防衛省の発表文によると(画像)、自衛隊のC130H輸送機2機が、トンガの国際緊急援助活動のため、本日にも出発するらしい。準備が整えば輸送艦「おおすみ」も向かうということだ。一昔前なら、左翼・平和団体は「海外派兵だ」と騒いでいただろうけれど、さすがに今回はそんなことはしないと信じていいのだろうか。