この問題で大事なことは、日本の左翼や平和勢力が、台湾を武力統一する方針を持っている中国を批判することを第一義的に重視することだと思う。ずっと書いていることだけれども。

 

 台湾有事が起これば、半導体産業を中心に世界経済が壊滅的な破壊を被ることを打ち出し、有事を避けるようにすべきだというコメントがあった。それはその通りである。 

 

 ただ、中国批判を第一義にしない場合、そういう議論だって、世界経済が破滅するから、アメリカや日本は戦争を起こすべきではないと、左翼は言っているように捉えられてしまう。中国が台湾に侵攻するから、壊滅的な事態が生まれるというのに、そこを回避するように見えるのである。

 

 だから、そういう議論をする場合は、アメリカや日本が軍事対応しなくても、世界経済は同様の打撃を受けるのだということを、中国に対してもの申すという姿勢を貫くべきだと考える。もしかしたら中国は、そういうことを織り込み済みで、短期的には壊滅的事態になっても、中国による台湾支配が安定的なものになれば、いつか半導体産業も復活し、そのすべてを支配している中国の繁栄につながると考えているかもしれない。そういうことにはならないと証明するような論立てにしないと、中国を擁護する議論となりかねない。

 

 コメントがあったので半導体の話になったのだが、要するに、他の問題でも同じである。左翼や平和勢力の発言を見ると、どうしてもアメリカ(と日本)批判が主で、中国批判は脇においやられているか、何も言わないかということになっている。ただでさえそう思われていて、世論から浮きまくっているのだから、それを激しく意識した言動をしないと、どんどん世論から取り残されてしまう。

 

 台湾有事の本の執筆がなかなか進まないのは、そういう戦後の左翼、平和運動の体質を根本的に転換するようなものにならないといけないと考え、あまりのカベの高さに気が遠くなってしまうからかもしれない。

 

 『憲法九条の軍事戦略』を書いたときも、それまでの護憲運動を乗り越える気持だったけれども、それを二倍三倍するだけの覚悟が求められているのかもしれない。がんばらなくちゃ。