本日の朝日新聞(3面右肩)によると、外務省の地位協定室は、米軍に検疫ができない根拠について、昨日引用した地位協定9条の「外国人の登録及び管理に関する日本国の法令の適用から除外される」のうち、「管理」に検疫も含まれるからだと述べているそうだ。地位協定室というのは、これまでもずっと米軍に日本の法律を適用しないように屁理屈をこね回してきたのだが、ここまでやるのかと思ってしまう。

 

 これまでの政府の公式見解は、米軍に日本側が検疫をできないのは、直接には地位協定で規定されているわけではないというものだった。野党の側も、地位協定に何も規定されていないのに、検疫が免除されるのはおかしいだろうと追及してきたのである。困り果てた政府は、70年代初頭、協定に書いていなくても米軍には日本国法令は適用できないとする立場を確立する。

 

 「検疫関係につきましては、地位協定上は先生御指摘のとおり何ら規定はございません。したがいまして、こういう場合には、ただいま御指摘のとおり第16条の一般的な『法令を尊重』ということがかぶさると思います。ただ、国内法令を尊重する義務があるという規定の仕方は、一般的に日本国法令を適用するという場合とは多少意味が違いまして、国内法令を実体的に守る義務があるということでございまして、われわれ日本人が法令の適用を受け、またそれに違反する場合に罰則を受けるということとはちょっと意味が違う」(1972年9月12日、衆議院内閣委員会)

 

 地位協定を根拠に日本国の法令を米軍に適用しない場合、どの法令のどの部分を適用しないのか、日本が特例法をつくるのが常識的なやり方である。例えば、米軍機の低空飛行でよく問題になるが、地位協定第6条に基づいて米軍に特権を与えるため、「……協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律」がつくられており、「航空法のうち、以下の規定を在日米軍については適用しない」として、夜間飛行の灯火義務とか飲酒しての操縦とかと並んで「最低安全高度の遵守」も除外されているわけだ。

 

 地位協定に根拠があるというのは、こういうことを指す。そして、外務省は9条の「管理」が根拠だと言っているらしいが、9条に関しては特例法は一つも存在してないのである。

 

 地位協定にも書いていない、特例法も存在しない、それだったら現状でも国内法にもとづき米軍に検疫をできるようにせよ。地位協定の改定を待つまでもなくそうせよ。そう要求することが大事だと感じる。(続)