共産党の規約を改めて眺めてみたが、党首選挙を公開で実施することは可能ではないか。少なくとも、それを積極的に阻むような規定はないように思える。

 

 現在実施されている仕組みでは不可能だ。党首は、「中央委員会は、中央委員会幹部会委員と幹部会委員長、幹部会副委員長若干名、書記局長を選出する」(第23条)という規定にもとづき、中央委員の互選で選ばれる。その中央委員は全国大会で選ばれる。全国大会に参加しない党員が党首の選出にかかわれるような仕組みではない。

 

 それでも現在、綱領には賛成だが政策には異論があるという党員が党首になろうと思えば、公開の党首選挙は無理にしても、道がないわけではない。「共産党の現在の政策を綱領の範囲内で変更すべきだと考えるので党首になりたい」と表明した上で、支部で多数となって地区党会議の代議員になり、地区党会議でも多数になって県党会議の代議員になり、県党会議でも多数になって全国大会に進み、そこで誰かの推薦を得て中央委員に立候補して当選し、最初の中央委員会で多数になればいいわけだ。規約上は可能なのである。

 

 しかし、現在の規約の運用では、党中央の政策と異なる政策を公表し、党員に伝えることができない。だから、党首になりたい人は、地区党会議や県党会議の短い時間のなかではじめて自分の考えを発表し、それをはじめてその場で耳にする党員を説得して多数になるという、アクロバチックな挑戦をしなければならない。だけど、規約上、その道があることは大事である。

 

 ただ、別のやり方もあり得るのではないか。例えば、党大会の半年前くらいに党首選挙を実施することを表明し、立候補を募るのである。綱領の範囲内では自由に政策を述べていいこととし、「赤旗」でも掲載するのである。そして、中央委員会は党首選挙の結果を尊重して党首を決めることにすればいいわけだ。そんな規定が規約にあるわけではないが、それを排除する規定があるわけでもないので、不可能ではない。

 

 というか、現在の党規約は、中央委員会が「こうする」と決めれば、たいていのことはできるようになっている。政策をめぐって党内で議論する姿を国民に見せたほうがいいと中央委員会が判断すれば、そういうやり方はできるのである。現在の規約も、党員に意見が異なる場合があることを前提にしているが、その意見の違いを党首選挙をやっている期間は公開できるという運用にすればいいのである。

 

 もしそんな選挙が実現するなら、私は安全保障政策面で、「現在はあたかも『非武装・中立』が政策になっているようだが、それを当面は『中立・自衛』で将来は『非武装・中立』に変えるべきだ」と主張するのではないか。党内に異なる考え方があることは公開せず、綱領だけでなく政策面でも一枚岩の党を見せることが大事だ、そのほうが国民の支持を獲得できると考えるなら、そんなことは許されないだろうけれど。

 

 自民党の総裁選挙がこれだけ騒がれている折、共産党がこんな考え方を打ち出せば、自民党に負けないほど話題になると思うんだ。どうだろうか。