さて、次の訓練空域を見ていただこう。タイトルには「横田空軍基地VFR(有視界飛行)訓練空域」とある。

 

 先日お見せした空域は、都心上空に広がるUH-1だけのものだったが、これはそれを含め横田基地にあるVFRで飛ぶ軍用機の訓練空域となる。ここではC-130輸送機とUH-1とアエロクラブ(これは米兵の家族や軍属が加盟する飛行クラブでありセスナでの飛行をしている)の訓練空域となっているが、現在ではC-130の訓練空域となっているエリアはオスプレイ(CV-22)が加わっているわけである。

 

 いや、広いね。東京は都心だけでなく多摩地域の全域だし、埼玉や群馬、神奈川など広範囲に広がっている。UH-1はいちおう300メートル以上となっていたが(それ以下を飛んでいると米軍が公式に認めていることはすでに書いた)、C-130やオスプレイの訓練は500フィート(約150メートル)となっている。人口が密集している地域だってあるのにね。

 

 さて、なぜここ1〜2年、都心上空における米軍機の低空飛行訓練が騒がれるようになってきたかだ。これら訓練空域は、2013年春の横田基地が主催する会議で配られたもので、もう8年も前のことである。それよりずっと以前も、群馬の渋川市などでは、米軍機の低空飛行訓練が常態化していたのだが、なぜここ1〜2年で激化したのか。

 

 そこにあるのは横田基地の機能の変貌ではないかと思われる。横田基地はこれまでずっと空軍の輸送のハブというか、輸送・中継が主な役割であったが、そこに変化が生じているのだ。

 

 そのきっかけとなったのは、2018年10月にオスプレイ5機が配備されたことだ(24年までに10機体制)。この配備に伴い、横田基地には同機を運用する第21特殊作戦中隊が置かれることになった(その整備用に第753特殊作戦航空機整備中隊も)。

 

 その部隊の名称が示すように、空軍オスプレイは特殊作戦機と呼ばれる性格の軍用機である。具体的には見えにくい夜間やレーダーに捉えられない低空を飛行して敵地に進入し、パラシュートで降下するなどして特殊作戦部隊を送り込むのである。特殊作戦部隊は、日本では第1特殊作戦部隊群・第1大隊(陸軍、沖縄・トリイ)、第353特殊作戦群(空軍、沖縄・嘉手納)にあり、韓国(キャンプ・キム)やハワイにもある。

 

 この任務を遂行するために、横田基地には新たに450人の兵士が配備されることが予定されている。また、そのための駐機場やシミュレーター施設、ジェット燃料貯蔵施設などの建設も進められている。

 

 要するに、横田基地は、輸送・中継のハブ基地の機能にくわえ、特殊作戦部隊の出撃基地、訓練基地としても変貌を遂げつつあるのである。都心上空で米軍ヘリによる低空飛行が激化しているのも、こうした変貌と無縁ではなかろう。(続)