私が毎日読んでいる新聞は三つある。「赤旗」、「朝日」、「産経」だ。

 

 「なぜ産経なんか」と聞かれることがあるのだが、「当然でしょ」と答える。だって、これだけ右派的な見解が跋扈しているときに、その論理や根拠を極め尽くさないと、克服する道筋さえ示せないだろうから。それだけのためでも読む価値はある。

 

 しかも、時々、他紙にはない記事も見かけることがある。3月9日、米インド太平洋軍のデービッドソン司令官が、上院軍事委員会の公聴会で証言した報道も、産経新聞がいちばん詳しかった(一一日付で報道)。以下、部分的に引用する。

 

 「通常戦力による対中抑止力が崩壊しつつあり、米国および同盟諸国にとって最大の危機となっている」

 「今後六年間のうちに中国が台湾に軍事攻撃を仕掛ける恐れがある」

 「中国の周辺で武力紛争が発生した場合、米海軍が米西海岸をたって、沖縄とフィリピンを結ぶ『第一列島線』に到達するのに約三週間かかると指摘。それまでは、敵前上陸能力を含む高度な戦闘能力を有する自衛隊への期待を表明した」

 

 産経新聞は、きっとこれを誇りに思ったから、長い報道記事にしたんだろうね。台湾有事の時は、米本土から来援部隊が到着するのに三週間かかるから、その間は、自衛隊に期待するという証言だったのだから。これほど自衛隊の役割への期待が高いのかと、胸が躍ったのだろう。

 

 しかも、その自衛隊は「敵前上陸能力を含む高度な戦闘能力を有する」のだ。あれれ、中国が台湾を占領したら、自衛隊は台湾に敵前上陸するというのだろうか。

 

 そんなことをすれば、日本本土も中国のミサイルの標的である。デービッドソン司令官は、日本全土が戦場になり、犠牲が出ても、三週間後には助けに来るからガンバレ、と言っているわけだ。

 

 産経さん、ホントにこれでうれしいんですか。かなりズレていることは自覚した方がいいのではないかと思います。私は、アメリカ軍の戦略がよく理解できて、たいへん勉強になりましたけど。