というタイトルの本を、3月末に刊行する。著者は聽濤(きくなみ)弘さん。

 

 若い人は知らないだろうけど、共産党の国際部長、政策委員長などを歴任し、参議院議員をやっていた時期もある。若い頃にモスクワ大学に4年間ほど留学し、社会主義論の権威でもある。

 

 私も聽濤さんの本はむさぼるように読んだものだ。私が国会議員の秘書だったころ、「前衛」という雑誌に、政権を獲得したレーニンが社会主義の建設に向かって失敗を繰り返しながら苦難のなかで突き進んでいく話を書いたのだが、それが当時政策委員長をしていた聽濤さんの目に留まるところになり、私も政策委員会で働くことになった。

 

 聽濤さん、退職後もしばらくの間は、新日本出版社から本を出していたのだが、不破さんの理論と少し違ったものを書くようになって、新日本からはダメ出しということになる。そこで、若い頃お世話になった経緯もあって、私が勤める出版社で引き受けることになったのだ。工藤晃さんも似たような経緯で、私が出版を引き受けることになった。

 

 聽濤さんの本の特徴は、つねに現代的な問題意識に立脚していることである。この本も、資本主義的な経済成長が地球環境を危機に陥れる現実にたって、マルクスが「生産力」と表現していたものをどう捉え直すべきかという問題を提起している。それが、『経済学批判 序言』の読み方を変え、史的唯物論の新しい捉え方にもつながっていく。失礼な話になるが、普通は80歳を超えると、理論家と言われる人でも、現実には関心がなくなって、頭の中で理論をこねまわす場合が多いが、現実への向き合い方には頭の下がる思いである。

 

 そういう問題意識に立っているので、若い理論家とも相性がいいはずだ。その若い理論家の代表格である斉藤幸平さんの講演会を企画した人に、聽濤さんとの対談企画にしたら〃かと打診したら、話がどんどん進んで、6月には対談が実現する運びである。

 

 従来型のオールドボリシェビキだら目の前の現実にあわせて新しい理論家を試みようとする人と、従来の理論にとらわれない新進気鋭のマルキストと、その両名のぶつかりあいは、まったく新しいものを生み出すかもしれない。今からわくわくしている。