会社のメルマガに寄稿したものです。

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 来年初頭、『資本主義を改革する経済政策』を上梓します。一言で言えば、左翼・革新派からの経済政策を提示するところに、この本の最大の特徴があります。

 

 この間、アベノミクスなど政府や体制側の経済政策は華々しく打ち出されてきましたが、率直に言って、それに対抗する左翼・革新派からの提言は十分ではなかったと思います。政権の政策に反対する立場を明確にしたり、社会保障を拡充することは約束しても、経済学者が結集して体系的な政策を打ち出す試みはされてきませんでした。2年ほど前には、『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』などという、左翼にとって刺激的なタイトルの本が売り出されたほどです。

 

 私はこの間、安全保障の面では、政権に対抗する政策的な提起の本はつくってきたつもりです。10年前の『抑止力を問う』(柳澤協二/著)に始まり、今年の『抑止力神話の先へ──安全保障の大前提を疑う』(自衛隊を活かす会/編)に至る一連の著作です。経済の分野でも、すぐれた専門家を集めて提起する必要性は自覚し、経済官庁の幹部などとも接触してきました。しかし、そのような問題意識を持っている人はそう多くなく、経済という分野も挑戦するにはあまりにも大きな課題であり、そう簡単にできることではないと半ばあきらめた状態だったのです。

 

 ところが2年ほど前、複数の若手経済学者が私を訪ねてきました。そして左翼らしい経済政策の本をつくりたいというのです。私はいろいろ努力してきたが実らない現状をお伝えし、次の世代に先送りするしかないとお断りしようとしたのですが、最大限努力するから是非出したいと言われる。「次世代に」という私に対しては、「人生100年時代ですから、松竹さんの世代でもできる」と説得しようとする。「そこまで言われるなら」と腹をくくって取り組んだのがこの本です。

 

 その後、まず工藤晃さん(元日本共産党経済政策委員長)をお訪ねし、70年代初頭の経済学者を総結集してつくった『日本経済の提言』の経験を学びました。また、毎月の研究会を重ねつつ、そこでの議論をふまえ、刊行予定の本に掲載すべきテーマを研究している経済学者を訪ね歩き、参加をお願いしてきました。ビジネスマンにも通用する本にならなければと考え、大企業にずっと勤めていた方にお願いし、文系からも理系からも参加してもらいました。そうしてつくったのがこの本の編者である「支え合う社会研究会」です。それまで面識のなかった人も含めて集まり、一つの体系的な政策をつくるのですから、一巻の本をつくるだけといっても、そう簡単な作業ではありません。議論を闘わせながら、最後に会の性格として一致したのは以下のようなものです。

 

 「誰が支えるかという「自助・共助・公助」論の角度からではなく、個人の尊厳を基礎にした全員参加型コミュニティ(共同体)の現代的、日本的な展開を研究する」

 

 この本の内容を理解していただく上では、本の「まえがき」が最適ですので、それを以下ご紹介します。これも本文を書き上げたあとで、全員の一致点として確認されたものです。

 

 来年はいうまでもなく総選挙の年です。「支え合う社会」というスローガンは、立憲民主党や日本共産党も総選挙に向けて掲げて闘うようですが、それらの議論のたたき台になれば、筆者たちの苦労も報われると思います。左翼からのひさびさの本格的な経済政策の