これは2月刊行なのですが、4月1日に発売されるある雑誌が「沖縄と地位協定」という特集を組むことになって、そこで紹介されることになりそうです。特集全体をどう構成するか、いろいろお手伝いをさせていただいているので、そのおこぼれかな。100万部ほど出ている雑誌なので、影響があるかも。本日、この本の「あとがき」の一部を紹介します。昨日の紹介した「まえがき」の中で、「行政協定改訂問題点」のことが出てきましたが、それについてさらに突っ込んで紹介したものです。初校の戻しの段階で、以下を追加しました。

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 一九五九年に行政協定改定の交渉を開始することが決まった時、おそらく日本の官僚のなかでは、これで主権を奪われた現状から脱出することができるのではないかと、ある種の期待が膨らんだのではないでしょうか。その期待を胸に、省庁を横断して行政協定の問題点を洗い出す作業を行い、整理していった。しかし、当時の岸信介首相がめざしていた日米安保条約の改定は、アメリカが日本の国土を基地として自由に使うことに制約を加えるものどころか、自衛隊をアメリカの軍事作戦と一体化させることすら想定したものだったので、政府に仕える官僚として行政協定の本質的な部分には手を付けられないとあきらめざるを得なかった。しかし、それ以外のところでは主権国家としての矜持を何としてでも示したいと考えていた。「行政協定改訂問題点」には、そんな官僚たちの苦悩と意気込みが示されているように思います。

 

 けれども、その程度のことであっても、アメリカのカベは厚かったのでしょう。多くの場合、日本側の求めは受け入れられませんでした。官僚たちは、日本の主権が否定されていることが地位協定に刻印されないよう、「権利」という言葉を「措置」に変えたりして、何とか人の目に触れて恥ずかしくないようなものにすることに腐心せざるを得なかった。それこそが、この交渉の顛末だったと感じます。日米地位協定には、そんな日本のオモテとウラも含め、日本の真実が詰まっているということを、本書を書きながら痛感しました。