先日、自衛隊を活かす会と兵庫県の9条の会との共催イベントがあった。敵基地攻撃論を考えるのがテーマだった。
弊社の関連本をたくさん持っていったのだが、航空自衛隊で空将補をやっていた林吉永さんが共著者である『自衛官の使命と苦悩—加憲論議の当事者として』が完売だった。それだけ、お話が印象的というか強烈だったのだろう。
何と言っても、敵基地攻撃というのは、戦争そのものだというお話だった。柳澤協二さんも同様のお話をしたが、実際に敵基地攻撃となれば、その戦闘機に乗り込む空自の出身者なのだから、リアリティがすごい。
そう、自民党の国防族が語る敵基地攻撃論というのは、そこがない。全然ない。
だって、敵がミサイル攻撃に着手したら、そのミサイル発射基地を叩くのだと言って、それでおしまいだ。というか、それを可能にするために、情報衛星はどうするかとか巡航ミサイルが必要だとか、そんな議論はするのだが、敵基地を叩いて、その結果、戦争が本格的に始まるという話がない。
何というか、敵の基地を叩けば、相手が恐れ入って、それで日本国民は安心だとでも思っているのではなかろうか。自民党の国防族たちは。
そうじゃないだろう。敵基地を叩いたとして、全部のミサイルを一瞬にして叩けるわけではない。地下にあるミサイルも含めて、何百もあるミサイルを一瞬ですべて破壊すれば、もうミサイルは飛んでこないかもしれない。
しかし、そんなことはアメリカにだって不可能だ。もし一瞬ですべて破壊し尽くさなければ、相手は全力で反撃してくることになる。残存したミサイルをいっせいに日本にむけて発射することになるだろう。そうして本格的な戦争がそこから始まるのだ。
最初のミサイル攻撃で、どれだけの被害が日本国民に生まれるのか、自民党国防族は語らない。どんな被害があっても敵基地攻撃を手始めに戦争するのだという覚悟を日本国民に問うことなしに、この議論はできないのだ。というか、敵基地攻撃の技術論ではなく、それこそがもっとも大事なことなのである。
そんな議論を提起できない自民党、政府に、この問題を任せてはいけない。林さん、柳澤さんのお話を伺って、そのことを強く感じた。近く、自衛隊を活かす会のホームページで、動画をアップするつもりです。