ようやく書き上げ、昨日、集英社の新書編集部に提出しました。今のところ私がつけているタイトルは『逐条分析・日米地位協定のウラ・オモテ』。来年2月刊行予定です。

 

 本質的な特徴は別のところにあるのですが、細かいとも言えない程度に大事にしたことがあります。一つは、地位協定をめぐる最新の知見を盛り込んだことです。

 

 例えば、裁判権の問題をめぐって、日本側に裁判権がある公務外の事件・事故の場合も、重大なものでなければ裁判権を放棄する密約といわれるものが存在しているとされています。この問題の権威である新原昭治さんがアメリカの国立公文書館で発掘したのです。

 

 その文書が実際に存在していたことが判明したのが2011年。民主党政権で一連の核密約文書が公表されましたが、その中に入っていたのです。

 

 ただし、公表の前日、日米合同委員会が開かれ、その文書に書かれていることは約束というものではなく、日本側が一方的に声明したものを、そのまま議事録に残しただけだということを確認したということです。公表に際して、そういう弁明があったのです。そんなことを約束していたということになったら、さすがに批判が殺到すると思ったのでしょうね。

 

 ところで、こういう事実が明らかになって以降も、地位協定をめぐる本は何冊も出ていますが、ではその2011年以降、日本側に裁判権がある公務外の事件・事故がどれくらい発生し、裁判権は放棄したのかしなかったのかという、その実態はどこにも書かれていません。密約があったことだけが強調されるので、まだ密約通りの運用がされていると、読者は思ってしまうのではないでしょうか。

 

 その問題で、最新の事実を明らかにするようにしました。まだ法務省と最終的なやり取りをしていて、刊行までには十分な事実が明らかになるはずです。

 

 地位協定をめぐっては、アメリカ側がNHKの受信料を払っていないことも、ずっと問題になってきました。「これは地位協定で免除されている税金だ」というのがアメリカの言い分なのですね。そしてNHKは、受信料の支払いを拒む日本国民に対しては裁判を起こしたりしているのに、米軍の受信料拒否には有効な手立てをうってきませんでした。

 

 だけど、デジタル放送が開始され、局面が変わったはずなんです。だって、契約をしないと画面には契約を促すメッセージが出て、正常に視聴できないのですから。正常に視聴しているが契約はしていないとなると、何らかの方法でスクランブルを解除していることになります。

 

 まあ、そんなことも探求してみました。本質的ではないが大事なことというのは、そういう意味です。刊行に向けて、これからも少しずつ書いていきます。