さて、第一部、第二部のゾーンでは、たっぷりと日本の産業革命の光の部分を堪能することができます。このセンターは、昨日も書いたように、韓国の異論をきっかけに、徴用工の影の部分を展示することを余儀なくされたものですが、その際、日本政府は、徴用の時代を展示するだけでは、産業革命の全体を正しく伝えることはできないとして、このようなかたちになったものです。

 

 それ自体は構いません。というか必要なものでしょう。日本が短期間で西欧に並ぶような技術を発展させ、世界に誇る到達を築いたことが分かります。

 

 だけどまず、それを分かるのは日本人だけなんです。イマドキ、このような博物館などを見れば、どこも英語の説明くらいはあるものです。このセンターはそれだけでなく、韓国の人々に通用しないといけない。それなら、英語はともかくハングルは不可欠です。しかし、ぜんぜんありません。

 

 ホントに、ちゃんと示せば良かったんです。日本の産業革命が短期間に成し遂げられたのは、日本と韓国の労働者が過酷な労働条件に耐えてがんばったからだと、ちゃんとエビデンスを伝えれば、それなりの納得感があったのではないかと思うんですけれどね。そういうエビデンス抜きに「日本はすごい」なので、科学的な検証に堪えるまでのものになってい ない。

 

 いやまあ、それだけだったら、「短期間で開設したので間に合わなかった」という説明員の言葉を信じましょう。だけど、一歩で、間違いがあまりに目に付きます。

 

 だって、井上馨の顔写真が別の人になっていて、平然と展示されているんですから。時代が時代だったら、不敬罪でしょ。それに、アジアが欧米の植民地になっている地図があって、東南アジアが宗主国ごとに色の違いで表現されているのですが、朝鮮半島は何と中国と同じ色になっていて、さすがに説明員みずから先だって釈明をしていたほどです。

 

 これって、科学以前。一部とはいえ、こうやって日本ウソを展示しているわけです。いや、いつの日か訂正されるんでしょうけれど、日本政府が責任を持って開設したものが、この程度では、右派だって恥ずかしいでしょうね。そうでもない?

 

 ということで、一堂、ようやく第三部へ。徴用工のことが分かるゾーンです。

 

 ここで説明員が交代します。かなり高齢の男女があらわれ、自分たちは軍艦島で生まれたり、働いていたりしたと自己紹介。私も、「すぐ近くの崎戸島で生まれました」と自己紹介し、微笑みが生まれます。

 

 そこで具体的な説明が開始される前にわかったのですが、このゾーンは、一部や二部とは違い、日本政府がこのセンターを開設した趣旨に沿って、正式な説明を行う場所ではないのです。軍艦島の出身者が、同じ軍艦島出身の自分たちの友人、知人を訪ね歩き、そこで得た証言を展示する施設になっているのです。

 

 その努力は多としましょう。だけど、そこから壮大な矛盾、虚構というべきものが誕生するのです。(続)