必死で書いている地位協定の本。現在のところ、タイトルは『日米地位協定のウラ・オモテ』とつけるつもりだが、ようやく第24条の解説を書き終えた。地位協定は全部で28条あるが、26条から28条までは解説不要な条項なので、あとは25条を残すのみ。先が見えてきた。

 

 第24条は「経費の分担」条項である。在日米軍の費用を、日米のどちらがどういう基準で分担するのかが定められている。いわゆる「思いやり予算」もここの対象だ。

 

 よく知られているように、ここでは、基地の提供にかかわる費用は日本が分担し、それ以外は「すべて」アメリカが負担すると書かれている。そして、その規定に明確に反するものを日本が負担することとしたため、1989年からは「特別協定」を締結してやってきた。

 

 法律の世界では「特別法は一般法を破る」という考え方があるので、地位協定に反しても特別協定を締結すれば合法になる。しかし、あくまで特別法、特例法なので、一般化するものではない。だから、特別協定を最初に結んだ89年、外務省は国会で、「暫定的、特例的、また時間的にも五年間に限っている」(柳井俊二条約局長)と弁明している。

 

 ところが、その暫定的、特例的だったものが、89年から2020年まで、すでに31年も続いているのである。地位協定という一般法ができたのが1960年。特別法である特別協定を結んだのが89年だから、29年間だ。すでに特別協定の時代のほうが長くなっている。

 

 これって、もう、特別協定は特例だ、暫定だとは言えないということである。法治国家として恥ずかしい状態に突入しているということだ。

 

 この状態を解消する方法は二つある。一つはいうまでもなく、もう特別協定は結ばないということだ。来年3月に5年の期限がくるけれど、それでおしまいにする。

 

 もう一つは、特別協定の内容を地位協定に盛り込んで、一般法化してしまうということだ。それをやろうとすると地位協定の改定が必要になるので、これをきっかけにして、沖縄をはじめ米軍基地のある自治体が強く要求している地位協定改定につなげることができるかもしれない。

 

 いずれにせよ、次の特別協定の交渉は、日本にとって正念場だ。トランプさんは、現在、特別協定で日本が負担しているのは1500億円程度だが、それを80億ドル(約8500億円)にまでしろと言っているからね。米軍兵士の給与から艦船や戦闘機の運用経費からすべて日本に出させて、さらに感謝料の上乗せするというだけの額である。

 

 日本のあり方が問われる交渉になる。