「赤旗」の安保改定60年と題したシリーズの第三部が始まった。思いやり予算がテーマである。トランプさんが日本に対しても大幅な増額を求めているとされるし、来年初頭から、思いやり予算を規定する「特別協定」の交渉が開始されるので、非常にタイムリーである。

 

 ただし、この記事を読者に納得してもらう上では、当事者性が大事ではないか。もし、総選挙があって、共産党が待望している野党政権ができれば、特別協定の交渉を担うのは新しい政権となる。もし共産党が閣内に入っていれば、そして志位さんが外務大臣にでもなっていれば、日本側の交渉当事者は共産党である。その際、この記事の立場でアメリカと交渉するのかを考えた上で、記事は書かれるべきだろう。

 

 例えば、この記事では、「『思いやり予算』も増額ではなく停止すべきです」とある。しかし、じゃあ共産党は閣内に入って、そういう主張をするのだろうか。

 

 野党連合政権は、共産党が安保と自衛隊に関する独自の立場を留保する政権である。集団的自衛権を認めた閣議決定と新安保法制は廃止するが、それ以外の既存の法律、条約はすべて認めることを表明している。だからいっしょに政権をつくろくと野党に呼びかけている。

 

 既存の条約の中には「特別協定」も当然のこととして含まれる。従って、特別協定の「停止」などは間違っても主張できないのだ。せいぜい、「基地従業員の給与をなくすと日本人労働者は困るから残そうね」とか、「でも米軍宿舎は少し狭くして予算を減らそうね」とか、主張できるのはその程度である。

 

 「いや、それは政権に入った共産党の大臣が考えることで、政党としての安保条約に対する立場に変わりはない。政党としては思いやり予算は廃止するという立場だ」ということかもしれない。でも、もしかして政権ができて、志位さんがアメリカ側と交渉していたとして、志位さんは減額でがんばっているのに、「赤旗」はそれを猛批判する記事を連発するのだろうか。

 

 政党と政権の使い分けという方針が、それほどの覚悟を持ったものなら、まあいいんですけど。でも、きっと違うだろうと思うし、それなら今からどうするのかを考えた上で、記事も書くべきだろう。史上初めて、かすかなものではあっても、もしかして政権入りという局面があるかもしれず、注目されているのだから。