これは変化と言えるのか言えないのか。『中国は社会主義か』の広告が本日の「赤旗」に載ったのは、体験的に言うと、2つの点で大きな変化があります。

 

 まず、著者の一人に聽濤弘さんがいるのに広告が載ったこと。この間、聽濤さんの本を、『マルクスならいまの世界をどう論じるか』『200歳のマルクスならどう新しく共産主義を論じるか』と連続的に刊行しましたが、広告掲載は拒否されました。理由は、常任幹部会員だった人の本は、共産党の見解と少しでも異なっている場合、広告は載せられないというものでした。まあ、今回は中国をどう見るかという限定テーマで、共産党のほうが中国問題での見解を変えたので、聽濤さんの見解に接近したということかもしれません。実際、著者と同じメンバーで「中国は社会主義か」のシンポジウムを開催したとき、聽濤さんが共産党の見解(中国の大国主義批判)の擁護に回る場面もありました(これまでだったら批判の側だったでしょうが)

 

 もう1つは、そもそも中国を論じた本で広告が掲載されたこと。この十数年間、基本的にすべて拒否されてきました。中国の大国主義、覇権主義を批判した本はもちろんのこと、『中国は民主主義に向かう』という、中国共産党の幹部学者である兪可平さんの本もダメでした。この人、両国共産党の理論交流にも中国から参加し、そこで不破さんとも面識があって、刊行に際しては不破さんあてに手紙も書いて協力をお願いしたのですが、それでも広告掲載さえ拒否されたのです。そんなにすごいことを書いた本ではないのです。一党独裁体制を批判しているわけではなく、その枠内で複数立候補(中国では定数しか立候補を認めない慣行があるので、そこだけ変えようということ)の経験などを紹介したものでした。まあ、その程度でも、習近平体制では許されなくなっていくので、そこに忖度したのかもしれませんが。

 

 共産党が一月の党大会で、中国を「社会主義をめざす国」として評価していたのを取り下げたのは、それなりに意味があったのだと感じます。ただ、では共産党は中国をどんな経済的社会構成体の国かを判断したわけではないので、もっと活発に議論しないといけません。この本は、その議論に役立っていけばと思います。

 

 そういう点で、この本、共産党員や「赤旗」読者が重要な対象者です。だけど、まだ広告も掲載されていなかったのに、すでに爆発的に売れていて、先日、重版することが決まりました。広告なしで売れるのですから、広告の効果が期待できますね。在庫がどの程度か心配したりして。