韓国で大きな問題になっている李容洙さん証言に関し、私が言いたいことの基本は、すでに書いた通り。「元慰安婦の方々の政治利用は慎むべきだ」

 

 

ということだ。

 

 

 問題になっていることの中心は、挺対協や正義連が慰安婦のためと称して集めた募金が、慰安婦にはあまりわたらず、別のことに使われていたというものである。しかし、ユニセフへの募金などもそうだが、組織が強大化してくると組織運営の費用も必要になってきて、すべての募金が当事者にわたるわけではない。留学費用への流用などはもってのほかで、解明されないといけないことは多いが、慰安婦に全額がわたらないからおかしいというものではない。いくら挺対協を批判したいからといって、節度が必要だろう。

 

 ただ、そういうことに隠れて、李容洙さん証言であまり問題にされていないことがある。実はそこが大事だと考えている。

 

 李容洙さんは、証言の中で2015年の日韓慰安婦合意に関連し、「10億円が入ることは尹代表しか知らなかった」と述べたと報じられている。実際、李容洙さんらには伝えられなかったのだろう。

 

 しかし、これを逆に読めば、尹代表(挺対協の)は知っていたということだ。挺対協が慰安婦合意に反対した理由はただ1つ。合意が慰安婦に相談のないままつくらており、被害者中心という原則から外れるということであった。けれども、もし尹代表が事前に知らされていたのなら、その理由は成り立たなくなる。知った時点で慰安婦にもそれを知らせ、相談すれば良かったのだから。

 

 文在寅大統領は先日(8日)、「慰安婦運動の大義は強硬に守られなければなりません」と述べたという。私もその点は同意する。しかし、15年の合意を挺対協が知っていたというなら、その合意が被害者に伝えられなかった責任、「被害者中心」のものにならなかった責任は、日韓両政府ではなく挺対協にあることになる。

 

 日韓合意を破棄するため、文在寅大統領は時間をかけて合意形成過程を調査したはずである。李容洙さんの証言は、その調査の信ぴょう性を問いかけるものである。「慰安婦運動の大義は強硬に守られなければなりません」というなら、李容洙さんと尹代表への再度の聞き取りも含め、徹底的に調査をやり直すべきだと思う。