来年1月公開の韓国映画。監督はポン・ジュノ。京橋テアトルで試写を観た。

 

 先日、アメリカでも限定公開され、『ラ・ラ・ランド』以来で最高の興行収入と言われている。韓国でもすでに動員数1000万人を突破しているんだって。

 

 そんなことを書くと、どんなに楽しいエンタメかと思われるだろう。そう、楽しいのである。

 

 だけど、これって、深刻な階級対立を描いた映画である。半地下での生活を余儀なくされている家族と、興隆するIT企業の社長家族の対立である。誰一人として定職をもたない家族が、裕福な家族の中に入り込んで起きるさまざまな喜劇と悲劇である。

 

 常識的に捉えると、こんな対立を楽しくは描けない。普通なら『蟹工船』を執筆するのである。

 

 それが超一流のエンタメになるのだから、それだけで必見だ。日本でも就職氷河期時代にこんな映画があったら、自分を笑い飛ばしながら頑張れたかもしれない。自分たちの境遇を多くの人と共有し、いっしょに共感できることが、闘うことに必要な連帯感を生み出すのだから。

 

 ただし、そうは言っても、じゃあ、その階級対立をどうやったら乗り越えられるのか。そこはこの映画でも見えてこないように思える。どこかに希望を託そうとしているのは見えるのだけれど。

 

 でも、それは現実のきびしさの反映である。抑圧された階級のリアルな闘いのないところに希望は描けないかもしれない。

 

 とはいっても、連帯感を培えれば、いつか希望は見えてくるのではないか。家族の連帯に止まらない、抑圧された人々みんなの連帯である。抑圧された同士が反目し合っていては、希望どころではない。映画でも家族は連帯できるが、抑圧された同士は諍いがある。

 

 韓国でも日本でも、抑圧された人々が連帯し、その連帯が国を超えて広がっていく。この映画を観ながら、そんな未来を見たいという強い衝動を感じた。

 

 ネタバレ厳禁という監督の要請があるので、この程度で。こんな映画を公開前に観られるなんて、観られていないみなさんにたいして、申し訳ない。池田香代子さん、いつもありがとうございます。