国会では予算委員会の論戦が始まっているが、ボヤッと眺めている範囲では、日韓関係の問題はあまりテーマになっていないようだ。台風被害もあったので自然な流れかもしれないが、他にも問題になっているテーマはあるので、日韓関係だけが外されているようで、少し寂しい。

 

 このテーマで得点を挙げるのは、かなり難しいことは分かる。野党が質問する場合、安倍内閣への批判になるわけだが、その安倍内閣の対応が多くの国民の支持を得ているのだから、普通の批判では国民の理解は得られず、批判はブーメランとなって野党に向かってくる。

 

 批判って、いろいろな種類があるが、政治の世界における批判は特殊である。批判の目的が、次の選挙で相手の議席を減らし、自分の議席を増やすことに置かれるものだから、相手の弱点を暴き立て、「どうだ、自分たちのほうが正しいだろう」と国民に思わせるような批判になりがちである。

 

 日韓問題で求められる批判は、おそらくそういうものではない。最終的には、安倍晋三首相と文在寅大統領が、「この線で行こう」と合意を形成するものにならなければならないからだ。日本の植民地支配の残虐さをどれだけ暴き立てたところで(それ自体は必要なことだが)、それで安倍さんが反省して文在寅大統領の考えに同意することはあり得ない。

 

 求められている批判は、「現在の安倍さんでもここまでは同意できるだろう」「それなのになぜできないのか」というものである。しかも、安倍さんが同意できるその線が、文在寅大統領にも同意できるものでなければならない。韓国の大法院の判決とも矛盾しないものでなければならない。

 

 一言で言うと「離れ業」のような批判。明後日納品される『日韓が和解する日』では、それを提示することを試みた。これでOKだろうというつもりはないが、合意のための批判が求められるという観点で、いろいろな模索がなされることを期待したい。