左翼の中にはオリンピック嫌いが少なからず存在する。「日の丸」とか「君が代」から来るものだったり、もっと一般的に国家主義とか愛国心とか、そういう嫌悪感と結びついていたりもする。

 

 かくいう私は、そういう嫌悪感とは無縁なので、左翼内保守派と呼ばれたりするのだが、それでも来年の東京オリンピックは気が重たい。「復興五輪」のかけ声もそうだが、福島から聖火をスタートさせてみたりして、妙に福島の問題と絡めようとする政権の思惑が見えてくるからだ。それがいやで、来年の7月末から8月初めまでは、海外に行くほどの資金的余裕はないけれど、小笠原あたりで過ごせないかと、いろいろ手を打ち始めている。

 

 ただ、遠くに逃れたからといって、福島問題での政権のプロパガンダから自由になれるわけではない。それどころか、おそらく来年の夏前後は、オリンピック喧噪曲のなかでどうやって声を届かせていくのかが、左翼の大きな課題となっているに違いない。

 

 そういうことを懸念している人にとって、NHK大河枠で放映されている「いだてん」は必見だと考える。ええ〜〜、あれってオリンピックを盛り上げる政権側の思惑でつくられたものでしょ、だから見てないよ、という人もいると思うんだけれど、反対である。

 

 それを知ったのは、「いだてん」が始まる10か月も前、2018年の3.11福島ツアーの時である。ゲストでお呼びした「いだてん」の音楽を担当している大友良英さんが、夜の懇親会の場で、「そういう誤解も受けると思うけれど、全然違うんですよ」と説明してくださったのである。

 

 脚本の宮藤官九郎さんも、ウェブ上で「東京オリンピックを盛り上げるために巧みに仕組まれた国家的プロパガンダじゃない? そんな邪推を、この場でハッキリ否定します」と書いておられる。すごい、超断定である。

 

 それでずっとワクワクしながら見ているのだが、その断定的な否定が、心の中に染み渡ってくるような出来映えだと思う。国家の思惑に振り回されない一人一人の選手にとって意味のあるオリンピックとか、被災者に心を寄せてこそのオリンピックとかのメッセージが、気持ちよく伝わってくる。

 

 前回から第二部が始まり、まさに第一回東京オリンピック招致がテーマになってくるから、その中でどうやってこのメッセージを発していくのか。楽しみのようでもあり、大丈夫かという心配であったり、もっとワクワクして見ていくことになるだろう。

 

 「いだてん」を我が物にしていれば、来年夏前後の国家的プロパガンダに対して、さわやかに楽しく立ち向かえると思うよ。左翼必見である。