「万引き家族」が話題になった是枝監督の愛弟子(広瀬奈々子)が映画をつくったとテレビのニュースでやっていた。観たいなあと思っていたら、ちょうど先週末の東京出張の際に試写会があるということで、池田香代子さんに誘われて観てきましたた(今年4回目です。役得っていうんですか?)。ネタバレはなし。写真は試写会のあった京橋テアトルに行く途中にある八重洲ブックセンター(関係ないけど)。

 

 

 タイトルは「夜明け」。「秘密を抱えて逃げてきた青年(柳楽優弥)を拾ったのは、息子をなくした男(小林薫)。」とチラシにあるコピー。以下の紹介文が続いている。

 

 「地方の町で木工所を営む哲郎は、ある日河辺で倒れていた青年を助け、自宅で介抱する。「シンイチ」と名乗った青年に、わずかに動揺する哲郎。偶然にもそれは、哲郎の亡くなった息子と同じ名前だった。シンイチはそのまま哲郎の家に住み着き、彼が経営する木工所で働くようになる。木工所の家庭的な温かさに触れ、科目だったシンイチは徐々に心を開きはじめる。シンイチに父親のような感情を抱き始める哲郎。互いに何かを埋め合うように、ふたりは親子のような関係を築いていく。だがその頃、彼らの周りで、数年前に町で起きた事件にまつわる噂が流れ始める──。」

 

 その「事件」の故に本名を名乗れない青年と、とっさに出てきた名前に動揺し、息子の死への責任にとらわれる父親。それが親子のような関係になるのだから、ある必然性も存在するし、しかしいつまでも続くわけはないと常識的に理解できる。

 

 映画はその過程を丹念に追いつつ、最後に、ある「解決」を提示するわけである。その「解決」の持っている意味が映画のテーマであろう。

 

 それはいい意味でも悪い意味でもドラマティックではない。ただただリアリティにあふれていて、少しの希望もあれば、たくさんの不幸もある。そこを描こうとした監督の気概に敬服したい。伸びていってほしい監督である。

 

 一方、そういうリアリティを描く難しさも感じる。ただ普通の常識的なことを描くのだから。それを「観たい」と思わせる力量を身につけるには、素人が勝手なことを言うようだけれど、是枝監督に倍する努力が必要なんだろうね。でも応援したい。

 

 来年1月18日から、新宿東口伊勢丹そばのピカデリーでロードショー。1400円。

 

 ところで先ほど、産経新聞デジタルiRONNAから電話があり、百田尚樹さんの「日本国紀」の論評を依頼されちゃった。ちゃんと買って読んでから書かないと。「こんなことを書け」というご意見がありましたら、お寄せください。