月曜日の夜

 

お風呂に入る前に

机の上を片付けようかなぁ

 

って ちょっと思ったのが ことの始まり

 

机の上にあった

薄い冊子を動かした時

その下にあった テレビ の リモコン に手が触れて

テレビがついた

 


 

ん?


池松壮亮くんだ 

(→海のはじまり の 津野くん )


 

画面の中の 津野くん が

 

自転車を押しながら歩いてくる

うるさいくらいの蝉の声と・・・

 

スマホのバイブが鳴ってる音?

 

・・・ずーっと鳴ってるね

 

 

とらないの?

 

 

津野くんの息づかいが  

次第に荒くなって

しきりに胸をさすってる

 

 

・・・

 

 

あ… 

もしかして

これ

だめなやつかも

 

これ

今の自分が見たら いけないやつだ



 

すぐにテレビを消そうと思ったんだけど…



 

スマホを耳にあてたまま

みるみるうちに顔を歪( ゆが )めて

大粒の涙を流しながら

嗚咽している 津野くん の姿を見たら


 

苦しくなって 

かたまったまま

テレビを消せなくなった




そして…






津野くんと一緒に・・・泣いた


 

 

 

 

 

誰か が亡くなったんだね

 

それ を知らせる電話だったんだね



その時 が来ちゃったんだね


 


それも… 

きっと 

とっても 大切に思う人 を亡くしたんだ...

 

 

 

 

いつまでもいつまでも鳴っている電話は

 

どうしても自分に知らせたいことがある人 から 

かかってくる


どうしても自分に伝えたいことがある人 から

かかってくる

 


身近にそういう状況の人がいなければ

なんでもない電話なんだろうけれど


いつかかってきても全然構わないんだけど


 

執行(しっこう)を待つような思いでいる者にとっては


必ずとらなきゃいけない電話なんだけど 


ほんとは 出たくないし 聞きたくないし

 

ずっとかかってきて欲しくない電話。

 

 

 

 


膠原病 (難病)を患 (わずら)っていた が亡くなって


その体 ( からだ )も無くなって

 

もう会うことも話すこともできなくなった


( 亡くなる前の2週間ほどは入院していた )



 

私の記憶の中にしかいなくなった




でも


を思い出そうとすると

思い出したくない場面も

必ずくっついて出てきてしまう

 

 


腎臓が壊れかけて

一晩中おしっこが止まらなかった頃のこと…


壊死 ( えし)した組織を切り取るために通った

デブリの頃のこと…

(大人が泣いて叫ぶほどに痛がった)


とうとう起き上がることもできなくなった時のこと…


亡くなる前のこと…


医者から言われた言葉まで・・・

 

 


そんなことは思い出したくない。 

思い出したくもない。




楽しかった頃のこと

元気だった頃のこと

笑っていた顔… 


そういう事だけを思い出したいのに

 

 

思い出したくもないこと ばかりが

鮮明に刻まれ過ぎていて

楽しかったことが

上書き されてしまっているみたいに


何かを思い出そうとすると必ず 引っ付いてくる

 

薄れる気配も全然ない

 


 


だから…


蓋をした


鍵をかけた


重しものせて…

 


できるだけ

人の気持ちにも触れないようにしてたのに

 

ドラマで人が 泣くのも 亡くなるのも

見なくていいように

テレビも不用意につけないようにしてたのに…





 

津野(池松壮亮)くんを 見ちゃった





 

ちょっとでも 人の気持ちに触れてしまうと

鍵があいて 蓋もあいてしまう

 

 

澱(おり)は やっと

奥のほうの 底のほうに溜 (た)まって

濁 (にご)りも 少しは澄んできたかなぁと

思っていたのだけれど


一気に かき回されて また 濁り水 のようになった

 

 

のように感じていた時間も

次女に勧めてもらって 始めたブログ

少しだけ ほどけてきたように感じて


気持ちも楽になってきたように思っていたけれど…

 

まだまだ全部が癒えた訳じゃなかったんだね



あんなに泣いたはずなのに

まだこんなに泣けることにも びっくりしてる


 


月曜日

津野くんを見てから 心が波立っている


 

 

 これ以上 心の波 が大きくならないといいな







Caption 

 

🌱田舎の夕暮れどき🌱