(つづき)
次の日、私は街を歩いてみることにいたしました。多くの家が傾いておりました。倒壊した家もございました。いちばん印象的でありましたのは、市役所の三回部分がつぶれていることでございました。全国版のニュースでも多く取り上げられておりました。きっと、市役所の課長さんたちの引き出しの中にある偽の領収書やエロ写真などがありましたら、ヤバいとお思いになられたことと、心中ご察し致します。これは一般のご家庭でも同じことでございます。地震で倒壊したご自宅から、AVビデオやヌード写真等が見つかりだされたらいかがなものでありましょうか。空には、無数のヘリコプターが飛び、この市役所を撮影しようとしておりました。ただ、報道機関のヘリコプターの音がうるさく、せっかくの防災放送の音が聞こえないのは、残念でございました。
商店街は、案外倒壊している家が少のうございました。それは商店街の家は隣との間が狭く、傾いたときに、隣の家が支えているからでございました。道路の方に傾いた家は不幸と言うほかございません。
金曜日の深夜、土曜日の早朝でございましたので、家の中の片づけの時間は十分ございました。ただ息子の会社は大被害を受けたらしく、土曜日から出勤いたしました。それから三か月間、息子は早朝から深夜まで出勤いたしました。ボーナスより残業手当のつく月給のほうが多い通帳を見ました。
さて、電気の方はすぐに復旧いたしましたが、問題は水道でございます。この街は都市ガスではありませんので、プロパンガスでございます。調理には問題がございません。ただ水の方は、どこかで水道管が破壊されたらしく、断水が続きました。幸か不幸か、その夜は我が家の風呂の水は、栓を抜いておりませんでした。もちろん調理に仕えませんが、片付けで汗をかいた場合の風呂には入ることができました。ただ3日もすると、風呂の水は赤くなることがわかりました。これも電気が通じているおかげでありました。今の風呂は、たとえガスの風呂でありましても、電気が必要でございます。昔ながらのスイッチをひねって着火する風呂の方が、役に立つとお感じいたしました。風呂に関しては、被害に少なかった町のスーパー銭湯が、大賑わいでございました。
水がいちばん必要な時は、トイレを流す時でございます。この取っておいた風呂の水をトイレのタンクに入れて、急場をしのぎました。飲み水のほうは、母者の家にある井戸から持ってまいりました。電気は回復しておりましたので、モーターが使えました。近所の方々もお世話になった模様であります。3日目に断水は終わりましたが、まだ部分断水の時間がありましたので、水が濁ることも多々ありました。もちろん、水が出る間には、必ず風呂の水を入れておいて、そのまま翌日まで貯めておいたことは言うまでもありません。あの日以来、風呂の水は翌朝まで残すようにしております。また、二日目ごろから、自衛隊の給水車やペットボトルの水の配給もございました。(つづく)