(つつき)
私どもの住む街は、幸いなことに地震直後は停電いたしましたが、十分ほどで回復いたしました。まずは、布団も周りを片付けて、睡眠が確保できるスペースを作りました。テレビをおつけしましたところ、NHKでは深夜にも関わらず、放送を行っておりました。おそらく未曽有の地震でありましたので、緊急に放送を行ったのでしょう。画面を見ると私どもの住む街は、震度六弱となっておりました。私は震度四以上の地震の経験はありませんでしたので無理のないことだと思いました。我が家の二人の子供も起きて参りまして、寝室に来ました。後で聞いたところでは、いちばん危ないのが二階の下の部屋。次が二階の下で、二階のない部屋がいちばん安全だとのことでございました。それから、広いリビングを作ると、柱が四角しかないので危ないということもお知り申し上げました。その部屋に二階など造ろうものなら、危険度は数倍になるとのことでございました。我が家の子供たちも本能で二階のない寝室に来たことかとお思いいたします。
一通り片付けましたところで、前回と同様に近くの母者が心配になり、外へ出ました。余震が時々来ましたが、幸いにも小さなものばかりでした。ただ、母者の家に行く間に、私が見たものは、倒壊した家や傾いた家、怖くて外にいる人々でありました。母者の家に着き、ドアを開けようとしましたが、如何せん深夜でありましたので、鍵が掛かっております。インターフォンを鳴らしましたが、返事がありません。途方に暮れていますと、兄者が長男を連れてやってまいりました。兄者は、母者の家の前に事務所を構えておりますので、合鍵を持っております。それを使って母者の家に入ることができました。兄者が、「ガラスが落ちているかもしれないので、土足のまま上がれ」と申しました。さすが建築士だと妙に感心したことを覚えております。
家の中に入って、母者をよびますが返事がありません。寝室は二階でありますので、二階へ行ってみますと、ベッドの上に、眼を開けて横たわる母者がおりました。ベッドの周りには様々な物が散乱しておりました。前回の地震の片づけが終わらないうちに、この地震がやってきたことは幸いなのでありましょうか。とりあえず余震の心配がありますので、母者は私の家に引き取ることにいたしました。(つづく)