未納期間が多くて障害年金が請求できないケースとできるケースの一例。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
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年金アドバイザーのhirokiです。
 
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では本題です。
 
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1.何の病気や怪我なのかというより日常生活に支障が出ているかという点が重視される障害年金。
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公的年金の中の重要な年金の一つに障害年金がありますが、現在は260万人程の人が受給されています。
 
老齢の年金が約4000万人近く受給されてるので、受給者はそんなに多くないですね。
 
 
障害年金は年金の中では少数派なので、まだまだ存在を知られていない事も多いですが、随分周知されてきましたので徐々に認知されてきています。
 
 
ところで、障害年金というと障害者の人が受給するものであるという認識を持たれますが、実際はそういうわけではありません。
障害者手帳などを持ってる必要もないです。
 
世の中にはいろんな病気や怪我があり、そのせいで日常生活に支障が出てるような時に請求が可能です。
 
 
何の病気だから障害年金が貰える…というようなものではありません。
たとえガンであっても、単にガンであるというだけで貰える事はありません。
 
その病気や怪我でどのくらい生活上に支障が出ているかというのが極めて重要です。
 
 
よって、病気によっては治療が長引く事もあるし、後遺症などが残って日常生活が送りにくいというような事もありますので、そういう時に障害年金が請求できると考えてもらえればいいかなと
 
障害年金受給者の割合で一番多いのは、精神疾患のケースですが受給者全体の約60%ほどを占めています。
 
 
精神疾患は長期間の治療が必要なケースが多いので、障害年金受給者の人が多くなっているようです。
 
 
さて、この障害年金が老齢の年金と違うのは、自分から請求しないと受給する資格は無いという事です。
 
 
老齢の年金ももちろん請求しないと実際の受給には至りませんが、とりあえずその人の生年月日による受給年齢に達して、未納以外の10年以上の年金受給資格期間があるなら受給権はあります。
 
 
請求が遅れても、受給権のある年齢まで遡って年金を受給する事が出来ます。
ただし、年金は5年の時効があるので、5年を過ぎてしまうと受給できない部分が出てくるため年金請求は早くやってもらったほうがいいです。
 
他にも面倒なトラブルが発生しかねないからですね、特に年金を遅らせる理由がないならさっさと請求したほうが良いです。
 
 
例えば65歳から老齢の年金を受給するつもりが71歳で請求すると、遡って66歳以降の年金は受給する事が出来ます。
 
66歳から71歳までの5年貰ってなかった分は一時金で振り込まれます。
 
 
65歳から66歳までの1年分は時効で受給する事は出来なくなります。
 
 
このように、老齢の年金は請求してなくても支給開始年齢まで遡ってくれますが、障害年金はそういうものではありません。
 
 
病気や怪我をしたかどうかは年金機構では把握できるものではないので、自ら請求してもらわないとわかりません。
 
 
請求してようやく受給権が発生して、そこから年金の振り込みとなります。
 
 
なお、場合によっては障害年金が遡る事もありますが、老齢の年金のように悠長に構えられるものではないです…。
 
 
 
なので、障害年金請求を思い立ったら、できるだけ早く取り掛かるのが良いです。
他にも面倒な書類集めに時間がかかる年金でもあるからですね^^;
 
書類の面倒臭さは年金の中で一番です。
 
 
さて、障害年金は病気や怪我で働くのが困難な場合にとてもありがたい年金ですが、請求しても貰えない事もあります。
 
よって今回は障害年金請求できるかできないかを左右する年金保険料の観点から探ってみましょう。
 
 
過去の年金保険料の未納が多い人は受給する事が出来ない事態になります。
 

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2.請求しても貰えないケース
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〇昭和42年8月19日生まれのA子さん(今は55歳)

 

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20歳になる昭和62年8月からは国民年金に強制加入となり、8月分から国民年金保険料を納める義務が発生しました。
 
昭和62年8月から平成10年7月までの132ヶ月間は厚生年金に加入しましたが、平成10年8月から平成11年6月までの11ヶ月間は国民年金保険料を全額免除の後、平成11年7月から令和4年9月までの279ヶ月間は未納にしました。
 
A子さんは令和4年9月5日に脳梗塞を発症し、救急搬送されて治療を受けましたが半身マヒが残ってしまいました(障害等級2級相当とします)。
リハビリはしますが、現状維持のため。
 
 
日常生活にかなりの影響が出るため、知人から障害年金を検討してみたらどうかと勧められました。
 
 
よって、家族の人に年金事務所で相談してもらいに行ってもらいました。
 
 
 
ところが、年金事務所で「A子さんは障害年金の請求はできません」と門前払いになりました。
どうしてでしょうか。
 
A子さんは年金保険料の未納が多いですよね。
そこに原因があります。
 
 
まず、障害年金において初診日というのが最も重要なんですが、その初診日は令和4年9月5日。
この日が確定しないと障害年金は先に進まない。
 
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※参考
初診日は非常に重要ですが、この日に何の年金に加入していたのか?この日の前にちゃんと年金保険料を納めたり免除したりしていたかを見るため。
よって基準となるこの日がわからないと原則として請求ができない。
 
初診日は障害年金においては最も重要な日であり、この日の証明になりそうな資料などは保管しておく事をおススメします。
病院は5年間はカルテの保存義務がありますので、通院しなくなっても5年以内なら初診日の記録は残っています。
ただし、病院に行かなくなって5年を超えてると記録が残っていない場合があります。
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次に初診日を基準に、その前までの年金保険料の状況を見ます。
 
実際は「初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの保険料納付記録」を見ます。
 
なぜ初診日の前日においてなのかというと、保険事故である初診日が発生する前までに保険料を納めておいてくださいねという事ですね。
 
保険事故が起こってから慌てて保険料を納付しに行ってもダメですよという事です。
この考え方は公的年金でも基本的には同じです。
 
年金は保険だから。
 
民間の保険もそうですけど、事故が起こってから保険料を納めても保険金支払ってくれませんよね。
それと同じです。
 
 
あと、初診日の属する月の前々月までというのは、年金保険料の納付期限によるものです。
 
例えば7月分の保険料は翌月8月末までが期限ですが、そうすると9月の初診日を見る時までに確定してるのは7月分の保険料までですよね。
8月の保険料納付は9月末なので、まだ8月分までは確定していません。
 
よって、確定してる7月分までの保険料納付状況までを見ようという事です
 
 
そうすると、A子さんの場合は昭和62年8月から平成10年7月までの132ヶ月の厚年期間と、平成10年8月から平成11年6月までの11ヶ月の免除があります。
そして、平成11年7月から令和4年7月までの未納が277ヶ月ありますよね。
 
 
全体は132ヶ月+277ヶ月=409ヶ月
 
 
この409ヶ月の内、3分の1(33.3333…%)を超える未納があると障害年金請求が出来ません。
 
 
つまり、未納277ヶ月÷409ヶ月=67.7%なので、33.333…%をゆうに超えています。
 
こうなると請求が不可なので、門前払いという事になります。
 
 
409ヶ月のうち、3分の1である136ヶ月までの未納だったらなんとか門前払いにならなくて良かったんですが…
 
 
それか、特例で初診日の前々月までの1年間に未納が無ければ、それでもよかったのですが残念ながら未納期間でした。
 
 
よって、A子さんは障害年金を請求できませんでした。
 
 
なお、もし障害年金が受給できていたならば、国民年金からの障害基礎年金2級777,800円(月額約65,000円)が傷病が続く限り受給できていました。
(他に障害年金生活者支援給付金年額60,240円)
 
マヒは治らないので、今後A子さんが55歳から90歳まで生きたとしたら、777,800円×35年=約2700万円の損になります。
 
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3.未納が多かったけど、障害年金が貰えた。
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〇平成5年6月20日生まれのB男さん(今は29歳)
 
20歳になる平成25年6月から非正規雇用者として働いていましたが、国民年金保険料の納付を怠っていました。
 
年金保険料の納付義務が始まった平成25年6月から令和3年2月までの93ヶ月間をずっと未納にし続けていました。
 
 
家族からの助言で年金保険料の免除はしていたほうがいいと言われたので、令和3年2月5日に市役所に免除手続きに行きました。
 
免除が通れば直近2年1ヶ月以内の未納は免除になります(免除が通るかは所得による)。
 
 
その後に、平成31年1月から令和3年2月までの直近2年1ヶ月間は全額免除になり、令和3年3月から令和3年6月までの4ヶ月も免除となりました。
免除はその年の7月から翌年6月までのサイクルなので、7月以降も免除を希望するなら令和4年6月まで免除となります。
 
 
さて、B男さんは20歳以降ずっと未納でしたが、令和3年2月5日の免除手続きのお陰で、平成31年1月から令和3年6月までの期間が免除期間となりました。
 
 
と同時に、前々から会社を休む回数が増えてきていて精神状態の悪化を危惧し、上司から心療内科に受診を勧められ、令和3年2月27日に病院に行きました。
診断は鬱状態という事で、薬などを処方されて通院する事になりました。
 
(年金保険料は引き続き免除が続くとします)
 
令和4年6月頃からは退職して、ほぼ引きこもる状態になりました。
 
 
医師からは診断書は書くから障害年金を請求してみてはどうかとB男さんの両親に提案され、障害年金の請求を検討に入る。
 
 
そうすると、初診日は確認すると令和3年2月27日であり、そこから1年6ヶ月経過した日以降に請求できるという事を知る。
 
よって、初診日である令和3年2月27日から1年6ヶ月経過する令和4年8月27日以降にならないと請求できない。
 
そして、初診日の前日において初診日の前々月までに3分の1を超える未納があってはならないというのがあり、平成25年6月から令和2年12月までの91ヶ月間は本来は未納でしたが、免除のお陰で平成31年1月から令和2年12月までの24ヶ月間は全額免除。
 
それでも、全体のうち3分の1は完全に超える未納率なので請求不可なのか…というと、特例があった。
 
 
初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの1年間に未納が無ければそれでもいいと。
 
 
そうすると令和2年1月から令和2年12月までの1年間は未納ではないので、それで請求が通る事になりました。
 
直近1年要件という。
請求が通る事になったのは免除手続きを「初診日前」にやっていた事が僥倖でした。
 
 
よって、B男さんは令和4年8月27日時点(この日から3ヶ月以内の診断書を書いてもらう)の障害状態により、その翌月分である令和4年9月分の年金から受給する事が出来ました。
 
 
なお、障害年金請求は請求後、3ヶ月から長くて6ヶ月ほど審査に時間がかかります。
 
 
B男さんは令和4年12月中に障害基礎年金2級777,800円+障害年金生活者支援給付金60,240円=838,040円(月額69,836円)の支給決定が下り、令和4年9月分に遡って年金が振り込まれました。
 
 
それ以降は偶数月の15日に前2ヶ月分の振り込み。
 
 
このように過去の未納が多くても障害年金受給が出来る場合はありますが、納付状況はあくまで初診日の前日までで見るという事をご留意ください。
 
そして、門前払いにならないためにも保険料を未納ではなく免除しておく事が大切です。
 
 
※補足
B男さんは免除手続きが令和3年2月5日で、初診日が令和3年2月27日です。
免除手続きを初診日以降にやっていたら障害年金請求不可でした。
 
例えば初診日である令和3年2月27日以降に免除手続きをしていたら、それでも直近の2年1ヶ月は免除になりますが、初診日以降の手続きとなるために直近1年要件は適用できずに障害年金を請求する事が出来ませんでした。
 
初診日前に免除手続きをした事で、直近1年要件を満たす事で障害年金請求が可能となりました。
 
 

 

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11月2日の第266号は、「年金受給者が亡くなった場合に必ず発生する未払いの年金と、死亡者の年金記録が訂正された時」

11月9日の第267号.年金を貰うのは65歳からなのに、どうしてそれより早く貰ってもいいケースがあるのか。

11月16日の第268号.老齢基礎年金の上乗せ年金である付加年金が作られた歴史と、年金計算事例。
 
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10月12日の 第263号.65歳以降の年金受給者にかかる源泉徴収税額と確定申告時の計算。

10月19日の第264号.離婚後に元配偶者から貰える厚生年金記録の誤解と現実。

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