昔の国民年金保険料は月々100円の低額だったが今は16,340円に上がる中で何が起こったのか。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

おはようございます!
年金アドバイザーのhirokiです。
 
今日のは有料メルマガに使うつもりだったんですが、途中までですけどこちらにも書きたいと思います。
 
 
新年度になりましたが、国民年金保険料の金額が変わりましたよね。
 
平成29年度は16,490円でしたが、今年度は16,340円に150円下がっています
 
 
この金額は毎年変動します。
 
前年の物価と賃金変動に影響するからです。

 
 
国民年金保険料は平成10年度から平成16年度までは13,300円と変動しない事がありました。
 
 
これは平成9年に金融危機が起きて、大手金融機関の倒産から始まり(山一證券とかは知ってる人もいると思います)、いろいろな企業の倒産が相次いだので国民の負担をかけないために国民年金保険料を凍結させたんです。
 
 
平成16年改正により、凍結されていた保険料を平成17年4月に13,300円から280円アップして13,580円に上がり、その280円を毎年度上げていき、平成29年度までに16,900円に固定されることになりました。
 
ただ、16,900円に固定するといっても、この価額に前年の物価と賃金の変動率を掛けるので毎年変動します。
 
単に16,900円という金額に固定したのではなく、この固定した金額に物価と賃金変動率を加味した保険料改定率というのを掛けます。
つまり、16,900円×保険料改定率というのが本当の計算式。
この16,900円の額は法定額という。
 
まあ今年度だけで言うと、16,900円×(前年度改定率0.976×前年度物価変動率0.999×前年度実質賃金変動率0.992)=16,900円×0.967=16,342円≒16,340円(10円未満四捨五入)となったわけです。
※厚生労働省(平成29年度年金額改定ルールの物価変動率とかの値が出てるところを用いてます)
 
 
なお、平成31年度からは16,900円ではなく17,000円に上がる。
ちなみに平成31年度の国民年金保険料額も既に決まっていて、月々16,410円。
 
17,000円×(前年度改定率0.967×平成30年度物価変動率1.005×平成30年度実質賃金変動率0.993)=17,000円×0.965=16,405円≒16,410円
※厚生労働省(平成30年度年金額改定ルール)
 
 
この法定額の100円アップは国民年金保険料にも産前産後の保険料免除制度を導入するため。
出産予定月の前月から、出産予定月の翌々月までの期間の保険料を免除するが、支払ったものとして将来の国民年金(老齢基礎年金額)に反映させるための財源。
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さて、国民年金制度というのは昭和34年4月に制定され、昭和36年4月から今の毎月保険料を納める形のものが始まりました。
 
 
国民年金保険料の徴収が始まった当初は、35歳未満は月々100円で35歳以上は150円という金額から始まりました。
 

35歳前後で保険料が違うのは、若い人と中高齢の人では年金への意識が違うだろうという事で年齢により区別した。
 

 
今の公的年金制度は支払ってる保険料を今現在の年金受給者に送るという賦課方式を取っています。
なお、年金積立金や税金(今の基礎年金の半分だから約10兆円程の税金)も投入しながら約57兆円(平成29年に支払われた金額)の年金が支払われているため、修正積立方式ともいいます。
 
 

国民年金が始まった当初は、月々の保険料は100円とかそういうものでしたが今の公的年金制度のように賦課方式ではなく完全積立方式から始まりました。
 
 

将来の自分の年金のために保険料を積み立て、その年金積立金を運用して運用益も増やしながらその保険料と運用益も将来の年金給付に充てるっていう。
 
 
そのほうが公平だったから。

ただ、国民の生活水準に変動があって、財政の均衡が保てるように5年ごとに年金の再計算を行うという事も加味された。
 

しかし、この昭和30年代とか昭和40年代というのは急激に景気が良くなっていって、現役世代の賃金の伸びが年率10%くらい上がってき、消費者物価も年率5%程度も上がる高度経済成長の波に乗って、それが昭和48年の第一次オイルショックまで続きました。
 
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あと、昭和35年7月からの内閣ですが、このころは池田勇人という人が首相でしたが、10年間で所得を倍増させるっていう経済計画が行われ、その10年足らずで本当に所得が倍増した時代でありました。
 
 

まず何が行われたかというと、まずインフラの整備


当時、今みたいにあちこち舗装された道路とかはほとんど日本には無かったんで、徹底的にインフラ整備が行われました。
道路や港、水道や下水とかですね。


道路ができたら、多くの車が通るようになり、ガソリンスタンドができ、更にその辺で食事しようとか休憩しようという人も出てくるからレストランやらスーパーもできて、そういう所の雇用が拡大する。
 

そして町も大きくなっていく。
つまり、道路を作ったらそれだけで経済効果が劇的に出てたわけです。
 
 

それに昭和39年には東京オリンピックが行われる予定だったから、外国人の人がたくさん来るのに汚い道路じゃみっともないですよね^^;
東京オリンピックも好景気を促進させました。
オリンピック景気と呼ばれます。
 
 
また、戦後の日本の銀行って企業にお金を貸すほど力はなかったから、国民に預金するよう呼びかけ(預金キャンペーンみたいなのがあった)、そのお金で企業の設備投資が増えて生産も伸び、給与も増えていった。
それでまた、物が売れていく好循環。
 
 
 
で、そういうインフラ整備や設備投資のためにも年金積立金が利用されました。
 
 
そういうのが原因で今の年金制度の財政を圧迫してるんだ!とかいう人も多いですがそうじゃないですからね。
 

年金積立金もこういう経済の発展の為に使うと、景気がどんどん良くなって更に投資した年金積立金もどんどんアップだったから年金積立金の利用が間違ってたわけじゃない。

ただし、今は年金積立金は年金給付のために使う事になってる。
年金給付が本格的になってきたし今後も少子高齢化が進んで年金財政が重くなるから、そういう事に使うのは適切ではなくなってきたから。

今更、昔みたいにたくさん道路作ったところで景気が良くなるわけでもない。
 
 

それにあくまで、年金制度の財政を圧迫させてきた主な原因は昭和45年から始まった本格的な高齢化と、昭和50年に合計特殊出生率が2.0を割って少子化に転じた事。
そしてこの20年以上にわたる経済の停滞が原因。
 

年金制度を抜本的に変えるべきだ!といわれても、そもそも経済が良くならなければどんなに年金制度の形を変えても解決にはならない。
そもそも今の年金制度は昭和60年改正の時のおかげで、かなり柔軟な仕組みになっていて形を変える必要がない。


 
また、年金積立金から主に年金が支払われてると勘違いしてる人も多いですが、あくまで主な年金財源は保険料。

保険料と社会保障関係費からの税金で足りない分を補助的に使っているに過ぎない。
よって、年金積立金が運用により一時的に減った事でとんでもない大変な事が起こったガーンみたいなニュースを聞くたびに、なんでそんなに大騒ぎしてるんだろうと不思議な気持ちになる。
 

年金積立金は140兆円を超えてるから、たしかにちょっと運用が変動しようものなら数千億円とか数兆円の金額が動いてしまうからパッと見ると衝撃的なんでしょう^^;

そんなに年金積立金があるの!?と思われた方もいるかもしれませんが、さっきも書いたように年間57兆円という年金が支払われてるから、年金積立金だけでやろうとしたらとてもじゃないけど足りない。
 
 

平成13年度から年金積立金の自主運用が始まり(自主運用するまでは旧大蔵省だった今の財務省が一元的に国のお金として管理してた。国のお金だ!って事で厚生労働省に渡してくれなかった)、今まで何年もそういう運用益が上がったり下がったりを続けながら、結果的に現在60兆円以上もの運用益を上げてきてる事はあまり知られていない。
 
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話を戻しますが、そうやって現役世代の賃金が著しく伸びていき、年金額との差が開いていきました。
 
たとえば、昭和40年初期の勤労者の平均賃金月額は40,000円くらいだったんですよ。
昭和30年が18,000円くらいだったからその違いがわかると思います。
 
それに対し、国民年金ができた時は20歳から60歳までの40年間納めたら月3,500の年金という設定だった。
25年納めれば月額2,000円。
 
 
現役世代の賃金はどんどん上がっていくから、老後の年金の額と差が開くばかり。
 
 
これじゃあ老後の生活の基盤にはならないから、昭和36年から5年後の昭和41年から年金再計算により早速年金額も引き上げることになっていった。
 
 
だから、国民年金発足当初は国民年金保険料が100円とかそんなで完全積立方式だったけど、昭和42年1月から35歳未満の保険料を200円に、35歳以上の人の保険料を250円に引き上げて、段階的に保険料を引き上げる修正積立方式に変わっていった。
 
 
まあ、保険料引き上げないと年金の引き上げもできないですからね。
そういえば、自分の子供のために親御さんがまとめて子供の40年分の保険料を支払ったという事もありました。
 

昭和42年から保険料が段階的に引き上がる修正積立方式に変わる事になったから、この一気に保険料支払う制度は昭和41年に廃止されましたけどね。

ごくたまにこの人は完璧に納めてるなあ…と思ったら40年分一気に納めた人だったりとかがありましたね。
あまりお目にかかれる人じゃない(笑)
 
で、年齢による区別を無くして保険料を一律にしたのは昭和45年7月から。
 
兼ねてから課題でもあった、インフレにも対応するために年金を物価変動にも対応するための物価スライド制は昭和48年に導入された。
 
ちょうど同じ時期に、昭和48年の第一次オイルショックで昭和48年、昭和49年の2年間の間に40%くらい物価が狂乱的に上がったからその物価スライドも即座に発動し、年金額も一気に上がった。
今じゃ考えられない事ですがキョロキョロ
あんまり物価が上がったから、トイレットペーパーの奪い合いみたいなことも起こった。
 
 
よって、積立方式ではインフレによる積立金の目減りが顕著な時代でもあり、追い付かなくなってきたため、その年支払った保険料を受給者に支払うという経済の変動に合わせて修正していける強みがある賦課方式に徐々に移行していったわけです。
 
また、昔は保険料額は少なかったのに今は16,340円も支払うとか不公平だとよく言われますが、公的年金が整備されていったことによりその分私的な負担(家族が老齢の親の面倒を見るとか)が減って、公的な負担(老齢の親の面倒は公的年金が支える)に置き換わっていっただけの話であり、この保険料に対する不公平論は全くの誤り。
年金がなくなると単に私的な負担が増えるだけ。
 

 

 

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