こんなに年金保険料払ってきたのに払い損の上に遺族にさえ保障ないのぉ!? | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

例えばずっと国民年金第1号被保険者として、国民年金保険料を40年間完璧に納めてきた自営業の夫(仮に65歳到達月に死亡)が死亡した場合、同居の妻(子は居なくて仮に58歳)には何か年金は出るのか?
婚姻期間は10年以上有り。



遺族年金の話をする時に、遺族基礎年金という年金をよく記事に書きますが、何度も書いてきたように、子のある配偶者またはにしか遺族基礎年金は支給されません。



年金法で言う「」というのは未支給年金請求等を除き、基本的には18歳年度末未満の子または、障害等級1,2級に該当する子なら20歳までの子(障害手帳の等級とは関係無し)を言います。
子はいるけど、子が成人してたり婚姻してる場合も、子が居ないになります。



例の妻には年金法で言う所の子が居ません。



夫はずっと国民年金保険料納めてきて、65歳になってやっとこれから老齢基礎年金が貰えるという時に亡くなりました。


夫にしてみれば、年金保険料の払い損ですが、せめて妻に何か保障は無いのか



この場合一応、2つの選択肢があります。



まず掛け捨て防止のための死亡一時金というのがあります。
国民年金第1号被保険者期間に対する独自給付です


これは、国民年金保険料を36ヶ月以上納めている場合に支払われる一時金です。


金額は、
36ヶ月以上~180ヶ月未満→120,000円
180ヶ月~240ヶ月未満→145,000円
240ヶ月~300ヶ月未満→170,000円
300ヶ月~360ヶ月未満→220,000円
360ヶ月~420ヶ月未満→270,000円
420ヶ月以上→320,000円


となります。
ちなみに、※付加年金を3年以上納めてたら一律8,500円が付きます


受給できる範囲は、配偶者、子(18歳年度末未満とかは関係無し)、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順で※生計を同じくしていた人でこの順序で優先順位者に支払われます。



36ヶ月以上なんですが、国民年金保険料を免除してたりするとちょっと月数の数え方が異なります。
ちゃんと1ヶ月分納めてれば1ヶ月なんですが、半額免除だと2分の1ヶ月、4分の3免除だと4分の1ヶ月、4分の1免除だと4分の3ヶ月というふうになりますので気をつけましょう。
全額免除の所は月数に加えません



この夫は480ヶ月納めてるから、妻は320,000円が貰えます(少なー)


なお、夫が、老齢基礎年金を受けてない事、障害基礎年金を受けていない事が条件です。


ちなみにこの夫って65歳到達月に死亡してますよね。


例えば65歳到達月が今月で、普通に生きていたら来月から老齢基礎年金が発生して、2月15日にまず1月分の老齢基礎年金が支払われます(初請求の初回支払いだったら3月15日にズレるかなぁ…)。
要するに2月以降にしか年金は受け取れないわけです。



で、仮に1月に死亡してたら、確かに年金はまだ受け取れて無いんですが、1ヶ月分の年金が発生している為(支払いを受ける権利が発生。以下、支分権発生という)、死亡一時金は支給されません。

なお、この1ヶ月分は未支給年金として妻が請求します。


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もう1つの選択肢は年金として妻が受給する方法。

ただし、60~65歳までの有期年金として寡婦年金を受給します。


寡婦年金は婚姻期間が10年以上(事実婚も含む)で、夫の国民年金保険料納付済み期間と免除期間(学生納付特例や若年者猶予期間な除きます)が25年以上あって、夫に生計維持されていた妻に支給されます。

なお、夫は老齢基礎年金を受けていないこと、障害基礎年金の受給権が発生していない事が条件になります。
死亡一時金と違って、夫が生前、障害基礎年金の受給権が発生していた時点で不可になります。



貰えるとした場合は夫が受けるはずだった老齢基礎年金の4分の3の金額を年金として受け取れます(国民年金第3号被保険者の期間は金額の計算に含めちゃダメですからね~)


例の夫はちゃんと国民年金保険料480ヶ月納めてるから、老齢基礎年金満額780,100円×3÷4=585,075円(寡婦年金満額)5年間支給されます(老齢基礎年金満額は100円単位ですが、寡婦年金満額は一元化で1円単位)。
5年間貰うから総額が2,925,375円で、月額48,756円ですね



まあ、貰うんだったら寡婦年金貰った方が全然有利な気はしますが、夫死亡時に妻がまだ結構若いと、60歳になるまでに再婚の可能性も十分あるので、死亡一時金で貰った方がいいような場合もありますね(^^;;

もちろん、再婚(事実婚含む)したら寡婦年金の受給権は消滅します。



ちなみに、死亡一時金の場合、支分権が発生していると貰えなかったですが、寡婦年金はどうでしょうか。



寡婦年金も、老齢基礎年金を受けていない事が条件ですが、死亡一時金みたいに夫に老齢基礎年金の支分権が発生してたり、老齢基礎年金を繰下げ中または年金貰えるにも関わらず未請求で実際には年金が支給されていない状態で67歳とかで亡くなった場合は例外的に寡婦年金は請求する事ができ65~67歳までの貰わずにいた老齢基礎年金は未支給年金として2年分が貰えます。


なお、死亡一時金と寡婦年金どちらにも言える事ですが、夫が老齢基礎年金を65歳になる前に貰う年金の繰上げをしていた場合は、どちらも貰えません。



逆に妻が寡婦年金受給中に自分の老齢基礎年金を繰上げたら、寡婦年金は消滅します
寡婦年金はあくまで、自分が老齢基礎年金貰うまでの繋ぎの年金だからです。



また、遺族厚生年金が発生した場合でも、上記に当てはまれば死亡一時金や寡婦年金を貰う事は可能です(厚生年金と国民年金は制度が別物だから)。
ただし、60~65歳の間、寡婦年金と遺族厚生年金はどちらかを選択して受給します。
同時には貰えません。



なお、死亡一時金または寡婦年金のどちらかを選択した時点で、もう片方の受給権は消滅します



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※追記
子のある配偶者または子に、遺族基礎年金が発生する場合は死亡一時金は貰えません(遺族基礎年金貰えるなら掛け捨てにならないから)。


ただし、遺族基礎年金が発生しても、結果として支給されない状況であると死亡一時金がもらえる事があります


例えば子に実母が居て、夫が再婚して継母が出来た時に、夫が死亡した場合に子が継母と同居せず、実母と同居した場合は遺族基礎年金は子が受給する事になりますが(継母には子がいない状態だから、子のある配偶者にならない)、子は実母(親)と同居の為に遺族基礎年金が停止する為、実際には子は遺族基礎年金は貰えません。


この場合は遺族基礎年金の受給権は発生してますが、誰も貰えない状態なので、夫の配偶者である継母に死亡一時金が支給されます。


あと、仮にもしもこの子が18歳年度末前に実母から独立した場合は遺族基礎年金がもらえる事になりますが、継母に支給された死亡一時金は返金する必要はありません。