まず、「イネイネ・日本 プロジェクト」と同じ発想の「水稲栽培+セルロース系エタノール製造」プランについて考えましょう。
水稲栽培には素晴らしい利点があります。「土壌が瘠せにくい」ということです。
正確な名前は忘れてしまいましたが(多分アゾトバクターとクロストリジウムですが確実な記憶ではありません)、水田には土壌の浅い部分と深い部分とにそれぞれ優勢な微生物がいて、それらが空中窒素固定をするのだそうです。
マメ科植物の根粒細菌と同じ機能を土壌中の微生物がしてくれるのだそうです。
水の底にあるわずかな空気中の窒素を固定してるんでしょうね。
もっとも、水稲栽培に施肥が不要だと言いたいわけではありません。施肥は行われています。
これは推測ですが、現在の高生産性農業では、「自然の力による施肥」だけでは不十分なのではないかと思います。
そのほかに水田には素晴らしい機能があります。
水田は人工的な池です。上流から流れてくる水を蓄えます。そして農閑期にその水を抜きます。これを定期的に行う人工的な池です。
常に新しい水を蓄える。これは土壌を悪化させにくくします。
河川水はほんの僅かですが塩類を含んでいます。山の土壌成分をほんの僅か含んでいるわけです。
そういう塩類を含んだ新たな水を人工の池に定期的に入れるということは、定期的に塩類を補給していることになります。
しかも、塩類を過剰に土壌にため込むことはありません。塩害になるほど多量に塩類が蓄積される前に土壌を覆っている水にその塩類が溶け込み、定期的に(農閑期に)水田から水が抜かれることにより、過剰な塩類の蓄積が防止されます。
この機能は、アスワンハイダムが建設される前のナイル河の機能と同じですね。ナイル河は毎年1回洪水を起こしていました。その水が栄養塩類を上流から補給し、かつ土壌に過剰に蓄積された塩類は洗い流してくれていたわけです。
アスワンハイダムが建設されてからは、洪水は発生しなくなりましたが、その代わりに、エジプトの農地では施肥が必要となりまた塩害が発生するようになりました。
水田は塩類の土壌中濃度を適度な範囲に調節してくれるのです。
自然の力を巧妙に利用して、窒素肥料を自分で施肥し、かつ塩類量を自分で調節してくれる。水稲栽培は他の穀物栽培とは全く違って優れています。
持続性において、極めて優れているのです。