物質を原子レベルで微細に加工する「ナノテクノロジー」という分野がありますが、これがバイオテクノロジーと融合して「ナノバイオテクノロジー」へと将来は発展するだろう、という見解があります。この記事は私にそういう予感を与えてくれる記事です。

日本経済新聞朝刊 2007年2月26日(月) p19

(Quote)
京大 植物の光合成再現
安価な素材改良 CO2削減に活用

京都大学の研究チームは植物の光合成を人工的に再現し二酸化炭素(CO2)を糖やアルコール類に変える新材料を開発した。乾電池の電極などに使う安価な素材をナノテクノロジー(超微細技術)で改良した。まだ基本的な性能を確認した段階だが、理論的には植物の三百倍の効率で地球温暖化の原因となるCO2を減らすことが可能という。

京大の古屋仲秀樹講師らは独自の焼成技術で高純度な微小粒子からなる二酸化マンガンを作った。粒の大きさは数ナノ(ナノは十億分の一)メートル。植物の葉緑体でもマンガンが重要な働きを担うことが最近の研究から分かってきている。ナノ化で表面積が大きく反応が起きやすくなり、植物の光合成を再現できた。

新素材十グラムを作って実験した。反応を観察するため蛍光灯による弱い光での実験だったが、CO2がなくなることが分かった。太陽光など可視光下だと反応が促進され効率はさらに高まるとみている。

CO2を減らすため光合成を人工的に再現する研究開発は盛ん。これまでにも光のエネルギーを利用してほかの物質に変える素材はいくつか開発されているがいずれも効果で実用化には向いていない。

新材料は一キログラム当たり数百円のマンガンがベースで実用性が高い。自動車や発電所などCO2排出源に取り付けやすい小型装置が実現できると見ている。 (Unquote)

よく読んでくださっている方の一人、プロパンガスさんが人工光合成を推しておられます。こういう記事を読むと希望が湧いてきますが、私の考えでは、「完全に人工的な設備をつくるより、生物に自己増殖させる方が投入するエネルギーが少なくて済むので、エネルギー収支を改善させやすい」ということになります。

検証は将来に待たなければならないでしょう。

いずれにせよ、事実ならバイオテクノロジーの見地からしても非常に面白い研究成果だと思います。ナノサイズで加工したマンガンなどを植物に取り込ませ、光合成を加速することができるのかもしれません。

古屋仲(こやなか)さんのこの光合成に関する研究成果は今のところ京都大学のウェブサイトには載っていません。二酸化マンガンに関する記事はありました。これが出発点になっているのかもしれません。

http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_news/documents/060828_1.htm