システム生物学の進歩には、やはりコンピュータ応用技術の進展が大きく預かっています。
アメリカ連邦エネルギー省の研究報告 "Breaking the Biological Barriers to Cellulosic Ethanol" でもコンピュータ処理技術の重要性が述べられており、"high throughput technology" という言葉が何度も出てきます。
日経産業新聞 2006年11月30日(木) 13面
(Quote)
たんぱく質構造解析効率50倍
北大がNMRデータ処理ソフト 原子間距離を高速計算
北海道大学の稲垣冬彦教授らの研究グループは、核磁気共鳴装置(NMR)を使ったたんぱく質の構造解析の効率を五十倍程度に高めるソフトウェアを開発した。たんぱく質分子を構成するアミノ酸の原子間距離を高速計算する。従来、一年ほどかかっていた巨大な分子でも一-二週間で解析できる。
...(中略)...
開発した構造解析ソフトは「Olivia」と名付けた。たんぱく質を構成するアミノ酸に多数結合する水素原子の位置をNMRのデータから取り出す。特定の水素原子の近くにある別の水素原子の位置を数千通りの可能性の中から自動的に導き出す。こうした原子間の距離を調整しながら、たんぱく質の立体構造を構成していく。
従来は手作業で原子の配置を決めていたため、全体を見通しながら配置を決めていくのが難しかった。アミノ酸が三百個を超えるような大きな分子は複雑な計算になった。
このソフトを使ってたんぱく質の構造を解析したところ、分子量三万の場合で一週間程度、九千の場合で六時間程度で解析できた。従来は分子量三万を超えるたんぱく質の場合は、一年以上かかっていた。
...(後略)... (Unquote)
たんぱく質の解析が進めば、酵素の機能についての知見も爆発的に増えます。酵素はたんぱく質ですからね。
上述のように解析速度が爆発的に速くなりつつあるわけです。アメリカだけではないわけです。もちろん、これは一例に過ぎません。
こういう量的な変化は質的な変化を後にもたらすことが少なくありません。研究の深度がぐぐっと深くなるときがいずれ来るでしょう。